BizRobo! ブログRPA関連のお役立ち情報をお届けします
多くの業界で人材不足が叫ばれる中、医療業界や医療機関も同様の課題に直面しています。少子高齢化の進行に伴う医療需要の増加や、医療制度の変化、感染症対策などにより、医療現場の負担はますます重くなっています。
さらに2024年4月からは医師の働き方改革が本格的に始まり、医師の時間外労働の上限規制が導入されました。これにより、医療機関では従来以上に業務効率化やデジタル活用が求められています。
そんな中、RPAツールを導入し業務改革に着手する医療機関が増えつつあります。
本記事では、医療現場にRPAを導入することで得られる効果やメリット、導入時のポイントなど、医療DXの今後について実際の事例集を交えながらご紹介していきます。
目次
医療機関が「RPA」を導入すべき理由と医療業界の課題
医療現場へのRPA導入が求められる理由として、医療業界の現状から主に以下のような課題が挙げられます。
不足する医師・看護師の絶対数
医師や看護師など医療業界の人材不足は深刻で、医師がいないため医療機関の休廃業も増え続けています。OECDの統計によると、日本の人口1,000人あたりの医師数はOECD平均を下回っており、医療人材の不足は依然として課題となっています。

出典:医療関連データの国際比較-OECD Health Statistics 2019
日本は2.4人/1,000人で、OECD加盟国平均の3.5人/1,000人を下回っています。
また、医師の少ない地域で勤務することに不安を覚える医師が多く、各分野の専門医が多い都市部に医師が集中する「地域偏在」も地方医療の人手不足の要因となっています。
厚生労働省でも、医師の地域偏在や診療科偏在の解消は重要課題とされており、医療現場の人手不足への対応が求められています。
長時間にわたる勤務
病院の勤務医は、慢性的な長時間勤務が課題となっています。
労働政策研究・研修機構による調査によると、医師の1週間当たりの労働時間は平均46.6時間という結果が出ています。
特に都市部に比べ医師が少ない地方では、1人の医師が診なければならない患者数が多い傾向にあり、長時間の勤務につながっているのです。
医師の長時間勤務対策として厚生労働省が掲げる項目にも「ITなどの技術を活用して業務を効率化する」とあるように、現在の医療分野では業務の効率化や医師を取り巻く環境の整備などが推進されています。
医療業界における医療DXとは
近年DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する業界・企業が増えてきていますが、医療分野においても例外ではありません。
経済産業省が平成30年12月に公開した「デジタルトランスフォーメーションを推進するガイドライン(DX推進ガイドライン)」によると、DXは以下のように定義されています。
「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」
これを医療分野に置き換えて考えてみると、医療保険制度の中で公平性やフリーアクセスが求められることもあり、他の医療機関との競争性・優位性よりも、いかに効果的かつ効率的に医療提供を行うことができるかが重要となります。
そのため、医療分野におけるDXの定義は「医療機関が医療を取り巻く環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、患者や社会のニーズを基に、診療・治療といったサービス、経営モデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、文化・風土を変革し、医療提供上の課題を解決すること」と定義できるでしょう。
データ活用基盤構築による医療DX

データ活用基盤は、組織が抱える膨大なデータをビジネスで利活用する上で必要不可欠な技術的基盤です。
企業の様々なシステムからデータを収集・蓄積し、分析しやすい形にして保存するプラットフォームとして、昨今必要性が高まっています。
電子カルテの導入・活用
質の高い医療を提供するため、DXの前段階でよく活用される代表的な対策例が電子カルテ活用です。電子カルテは、患者の症状や治療内容を記録するカルテを電子化したもので、国内では1999年に初めて導入されて以来、大病院を中心に少しずつ普及してきました。
医師を中心とした関係スタッフと患者の情報をスムーズに共有できるうえ、レセプトコンピュータ(レセコン)との連携により、紹介状や処方箋作成、会計など迅速な事務処理が可能になります。
また、デジタル処理になるため、手書きのものと違い読みやすく、読み間違いなどから発生する投薬ミスなどの事故を防げます。
編集が容易であり、保存性に優れている点も魅力です。さらにカルテを探し出して受け渡し、元の棚に収納する手間が省けるうえ、外部も含めて関係各所とオンラインでやり取りができます。
これにより電話やFAXによる連絡も減るため、患者さんへの迅速な対応が可能となり、労働時間の短縮や作業負担の軽減にも役立つでしょう。
医療分野のDX推進に不可欠となっているRPA

医療現場の人手不足や労働環境問題を解消し、労働生産性を高めてくれるデジタルレイバーとして近年多くの業界、企業から注目を集めているのがRPAです。
夜間にロボットを稼働させておくことも可能なため、業務をRPAに記憶させ、毎日行う定型業務などで利用されていることが多く、従業員の残業や不要な作業を削減することが可能になります。
一方で、RPAは想定外の業務や自分で考えて判断する作業などは苦手としているため、「単純作業をRPAに任せ、人間はより高付加価値な業務を行う」というのがメインの使い方となります。
つまり、RPAは医療現場におけるDX推進にとって不可欠であると言えるのではないでしょうか。
医療業界へのRPA導入事例集
医療機関にRPAを導入したことで具体的にどのような効果が得られたのか、実際の導入事例を見てみましょう。
東京歯科大学 市川総合病院
千葉県市川市にある市川総合病院は、東京歯科大学を設立母体としています。その強みを活かして、医科と歯科の医療連携を充実させており、周術期口腔ケア、摂食・嚥下のリハビリテーションなどにも力を入れています。
同院では、2018年からRPAツール「BizRobo!」導入プロジェクトをスタートしました。医療情報システム管理課のメンバーが中心となってロボット開発に挑戦し、これまでに医療現場を対象とした9体のロボットの実用化に成功しています。
その中でも、大きな成果を発揮しているのが、放射線科の「造影剤CT・MRI検査前のeGFR値チェック」ロボです。患者の過去1年分の検査データからeGFR値を抽出して、リスト化してくれます。造影剤の使用が問題ないかの判定もしてくれ、医療の質の向上にもつながっています。
名古屋大学医学部付属病院
明治4年(1871年)の創立以来、中部エリアにおける高度医療を担ってきた名古屋大学医学部附属病院は、過重労働・人手不足が深刻化する医療業界の課題解決策の一つとしてRPAに着目し、2019年5月から院内全ての事務部門でRPAツール「BizRobo!」の導入を開始しました。
BizRobo!導入後、20名ほどのメンバーからなるRPAプロジェクトチームが事務部内に設置され、人事労務課の「医師の勤務時間の計算支援ロボット」や経営企画課の「外部資金の予算執行状況の確認表を作成して送付するロボット」など十数体のロボットが運用されました。
これにより年間1,000時間以上の業務時間削減に成功しています。その後もロボット化できる業務の探索が続き、現在は事務部のネットワーク上で43体のロボットが運用されています。さらに2023年からは診療ネットワーク上でも8体のロボットの運用がスタートしました。
医療法人徳洲会 吹田徳洲会病院
吹田徳洲会病院では、ロボット開発を外部委託せず、院内職員によるRPA開発体制を構築しました。
残業の多かった医事課を中心に取り組みを開始し、パートナー企業の支援を受けながら、約1年で25体のロボットを開発しています。
その中でも「未収金の入金確認ロボット」により、約8時間かかっていた業務を1時間以下に短縮し、残業時間の大幅削減を実現。他にも「レセプト返戻の報告ロボット」が有効活用されています。レセプト返戻のデータから部門ごとに必要な情報をフィルターで抽出する作業。それらの合計金額をExcelにまとめて各担当者にメールで報告するまでの一連の流れをロボットが完全に担っているといいます。
浅川学園台在宅クリニック
北九州市八幡西区で2018年9月に開業した浅川学園台在宅クリニックは、院長ら7人が、外部の訪問看護ステーション、ケアマネージャーや介護施設などと連携し、同区および近隣に住む患者80人に対する在宅医療を提供しています。
医師の関与が必須となる事務処理に充ててきた休診日に、院長が新型コロナワクチン接種に出務するようになったのを機に業務効率化を計画。定型的なパソコン作業を自動実行できるRPAツール「BizRobo!」を活用し、書類発行業務の省力化を進めていきました。
院長自ら開発した3種類のソフトウェアロボットは、最大で7割超の負担軽減を達成しました。これにより、同業の一般的水準を大きく上回る数の患者を受け入れながらも、余裕を持った対応が実現できています。
福岡県済生会福岡総合病院
福岡市中心部に380床の病床を持つ福岡県済生会福岡総合病院は、重症以上の患者を受け入れる福岡地域5カ所の三次救急医療機関のひとつ。2019年に開設100周年を迎え、現在1,000人近くが勤務する総合病院です。
2022年、DX戦略の一環として院内事務の可視化が進展したのを機に、かねてより検討していたRPAの導入を決定。医療界での導入実績が豊富な点を評価し、RPAツール「BizRobo!」を採用しました。
当初から外部に委ねることなく、自前で運用を完結する方針の同院は、事務各部門の代表者を通じてRPA化の対象業務を選定後、所属するシステムエンジニアの手でソフトウェアロボットを開発。それまで半日を要していた手作業がわずか5分で完了するようになるなどの業務改善を達成しています。
今後は院外と知見の共有を進めながら院内のRPA開発者養成を進め、各部署での自律的な運用を目指す計画です。
社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院
恵寿総合病院では、2021年からRPAツール「BizRobo!」を導入し医療DXを推進。導入初年度から年間9,000時間の業務削減を達成し、その後も130体以上のロボットを開発して業務効率化を進めています。
看護部や事務部門など各部門からの申請をもとにロボット開発を行い、退院支援計画書作成や病床稼働率モニタリングなど幅広い業務を自動化。
現在では年間12,000時間の業務削減を実現し、業務負担の軽減だけでなく、医療の質向上や収益向上にもつながっています。
社会医療法人 敬和会
社会医療法人敬和会は、大分県を中心に、7つの病院や介護施設などを展開し、高度な急性期医療から回復期、生活期、在宅、精神医療、さらには国際医療を含めた切れ目のない医療・介護サービスを地域に提供しています。
同法人のDX推進は、理学療法士や作業療法士、看護師などの現場職員で構成されるデジタル推進局が担っています。各部署から集まった現場職員による「内製化」にこだわり、業務効率の改善やデジタル人材の育成に取り組んでいます。
RPAツール「BizRobo!」を2023年から本格導入され、短期間で年間8,800時間分の業務削減を実現されています。これは労務コストに換算すると約2,400万円に相当します。
日本赤十字社 さいたま赤十字病院
さいたま赤十字病院は、33の診療科、638床の病床、高度救命救急センターや総合周産期母子医療センターを有する総合病院、災害拠点病院です。患者数は一日平均で、外来患者1,483名、入院患者573名に上ります(いずれも令和6年)。この多数の患者を迎え入れるのは、約1,500名の職員の方々。しかし、スタッフの業務量は年々増加し、人事課など一部の部署では恒常的に残業時間が多くなっていました。
そこで、業務時間削減のために2023年にRPAツール「BizRobo!」が導入されました。現在では100体以上のロボットが稼働し、約20の業務においてスタッフの負担削減に貢献しています。
これらの効果により、同院では現時点で少なくとも年間350時間程度の業務削減を実現しています。さらに、現場からあがる電子カルテシステムの改修要望に対してもBizRobo!で対応するケースが増えているといいます。電子カルテの改修には、通常数十万~数百万円の費用と長い開発期間が必要です。しかし、BizRobo!を上手に活用できれば、事務スタッフが1~2週間、業務の合間にロボットを開発することで課題解決できる可能性があります。そのため、潜在的なコスト削減効果はさらに大きいと見込まれています。
「医療×RPA」自動化の対象となる業務

医療現場において以下のような業務がRPAによる自動化の対象として挙げられます。
総務/人事業務
・共済・扶養関係書類の⾃動チェックおよび⾃動データ登録・部⾨別超過勤務時間の⾃動集計・作成
・給与⽇に財務会計システムからデータを⾃動抽出し⼈件費を計算、所定フォルダーに保存
・会議の開催通知、議事録送付等のメールによる⾃動処理
・新規採⽤者や退職者等の⼈事マスタの⾃動登録
経理業務
・業者から新規マスターデータを受け取り、院内物流システムの新規マスタへの⾃動登録
・財務会計システムからCSVデータを抽出して、収⽀簿作成ツールにデータを反映し、収⽀簿の⾃動作成
・契約書から⾃動で発注書作成、毎⽉の定例での債務計上の⾃動⼊⼒
経営管理業務
・財務会計システムからCSVデータを抽出して、収⽀簿作成ツールにデータを反映し、収⽀簿の⾃動作成
・⾃動で発注書作成、検収時の⾃動チェック、CSV請求書の⾃動取り込み
・旅⾏命令関連書類の⾃動印刷、⾃動チェック
・毎⽉の定例での債務計上の⾃動登録
医事業務
・⽉次、年次での患者統計の⾃動作成
・⼿術件数(施設基準の掲⽰に係る件数)の⾃動抽出
・⼊院基本料等充⾜状況の⾃動チェック⽀援
・後発医薬品使⽤率の⾃動算出⽀援
・重症度、医療・看護必要度︓短期滞在⼿術等対象患者の⾃動抽出⽀援
・未収⾦データの⾃動消込み
薬剤部業務
・医薬品情報に関するWeb情報収集・データ⾃動転記
・医薬品の発注オーダー、即卸し対応の⾃動処理
・レセプトのチェック、データ⾃動転記
(※薬歴の⼊⼒等薬事法等に抵触しない範囲のみ可能)
診察共有部業務
・検査結果のチェック漏れ防⽌の⾃動チェック
・レセプトのチェック、データ⾃動転記
・病院⾷献⽴と数量からの発注書⾃動⽣成
・その他PC上で⾏う業務全般
患者支援業務
・紹介状、逆紹介状の⾃動スキャニング、⾃動⽣成(スキャンニングに専⽤ソフトウェアが必要)
・患者カルテ開⽰要求によるカルテの⾃動印刷
・その他、PC上で⾏う様々な業務
看護部業務
・看護部⾨に関する各種経営情報の⾃動抽出・作成
・看護部⾨の領域別認定看護師・専⾨看護師情報の⾃動作成
・看護師⻑による出⽋状況や超過勤務時間等勤怠情報の⾃動チェック
・退院サマリや看護サマリ⼊⼒状況の⾃動チェック
・⼊院期間Ⅱを超える患者情報をベッドコントローラーへ通知の⾃動処理
・その他、看護師がPC上で⾏う様々な業務
(※保健師助産師看護師法等に抵触しない範囲のみ可能)
これらの業務を手作業で行うには多くの時間とマンパワーが必要とされ、さらに入力漏れなどの人的ミスも発生しやすくなります。
一方でRPAは1度操作を登録すると自動で業務を行えるため、一連の作業過程を1度記憶させれば、それ以降はRPAによる自動運転が可能となり、人的ミスも削減されます。
医療現場にRPAを導入する際の留意点
非常に便利なRPAですが、ただ闇雲に導入をすれば効果が得られるというものではありません。これからご紹介するポイントをきちんと押さえた上で導入し、最小限のリスクでRPAの効果を最大限に発揮させましょう。
医療業務を標準化する
まず、RPAを導入する前に、自動化の対象とする医療業務を洗い出しましょう。
そのうえで業務の効率や品質、安全性などを踏まえて最適な業務手順を設計するといった医療業務の標準化をおすすめします。
RPAを導入すると様々な定型業務を自動化できますが、指示出しや設定は人が行うため、医療業務を標準化していないと業務を行う人によってフローのバラつきが生まれる可能性があります。
業務の標準化は業務効率・品質の向上、そして安定などにつながります。どのフローをRPAに任せれば良いかを明確にするためにも、事前に医療業務の標準化を図りましょう。
院内での運用体制やルールを整備する
RPAは指示されたことしか実行できないため、期待する効果を得るためには人間が適切に運用・コントロールしなければいけません。どの部署の誰が・どのようにRPAを指図・運用しているのかなど、運用体制やルールを整備しておきましょう。
また、トラブル発生時に対応できる人物がいないという事態に陥らないためにも、管理担当者の退職や移動の際にきちんと業務の引き継ぎを行うことが重要です。
医療業界にRPAを導入するメリット
具体的にRPA導入のメリットはどのようなものがあるのでしょうか。医療機関にRPAを導入することで得られるメリットは大きく3つあります。
1.医療スタッフの負担が軽減される
医療現場は少しのミスや判断ミスが大きな大事故になりかねない、非常に気が抜けないお仕事となります。長時間労働による、医療ミスが起こらないためにも現場スタッフの負担を軽減することが非常に重要です。
医療事務で行う作業でも、繰り返し行うことで苦痛や疲れを伴う膨大な量の単純業務をRPAが代わって処理することで、医療スタッフを長時間労働から解放でき、スタッフの身体的、精神的負担を大幅に減らすことが可能です。
2.人的ミスの発生を防げる
医療スタッフは時間に追われていることがとても多いことで知られています。そのため、事務作業を限られた時間の中で素早く行う必要があります。このような業務はとても負担が大きいのです。
一方でRPAはコンピューターで動作するプログラムの一種であるため、大量の業務であっても人間のようなミスを犯す心配がありません。作業のルールさえ決まっていればスピーディーかつ正確な処理が行える点も魅力の一つと言えます。
3.人材の有効活用
医療現場は人手不足であることはよく知られています。限られた人的リソースの割り振りを定型業務にまで充てていては、人材不足もより深刻となってしまいます。そのための解決策としてデジタルレイバーを活用する必要があるのです。
人手不足が深刻な医療現場では、限りある人材を工夫しながら活用し業務を行っています。
RPA の導入によりスタッフを単純作業から解放することで、患者さんへの対面による説明など、人間の能力が必要とされる、より高付加価値な業務へ人的リソースを割り当てることができ、より良い医療サービスの提供が可能になります。
まとめ
医療業界の生産性を向上させ、労働環境を改善するための手段として、RPAは非常に有効です。
医療業界が抱える人手不足解消に寄与するためにも、さらに政府が掲げる「働き方改革」を実現するためにも、課題を明確にし課題解決に向けた導入を検討することをおすすめします。


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