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ハイパーオートメーションとは、RPAやAIなど複数のツールを組み合わせることで幅広い業務を自動化していくことです。大規模な業務効率化につながるため、次世代のデジタル戦略として注目を集めています。
しかし、実際にどう導入すればよいのか分からず、検討段階で踏みとどまっている企業も少なくないでしょう。
そこで本記事では、ハイパーオートメーションの成功事例を紹介します。さらに具体的な導入手順や、使用したツールも解説。
これから業務プロセスのオートメーション化を図る場合は、ぜひ参考にしてください。
ハイパーオートメーションとは
ハイパーオートメーションとは複数のITツールを組み合わせて、本来であれば人の手が介入する部分まで包括的に自動化を図る取り組みです。
2019年11月に発表された「ガートナー、2020年の戦略的テクノロジ・トレンドのトップ10を発表」において初めて登場し、言葉として広く認知されました(※1)。
現在多くの企業で、RPAといったツールを用いてタスクレベルの自動化が積極的に進められています。
しかしこれにはイレギュラー時の対応や、最終的な人のチェックが入ることがしばしば。このフローもAIや複数の機械学習 (ML)などを用いて、自動化するのがハイパーオートメーションです。
ハイパーオートメーションが実現すれば理論上、業務フロー全体を通して人の手が必要なくなります。
ハイパーオートメーションの解決課題
ハイパーオートメーションが実現すると、下記のような課題が解決できます。
・作業効率の低迷
・人材不足
・人為的ミス
・業務の属人化
・業務フローの不透明性(安全性やセキュリティ上の課題)
・部署やチーム間における業務の分断
自動化により、作業効率や生産性がアップするのはもちろんのこと。担当者の経験や勘による作業品質の差が出ることもありません。
また作業フローがすべて可視化されるため、業務がブラックボックス化することもなくなります。その結果、業務の安全性も担保されるでしょう。
このほか、本来人が考える部分も自動化することで、精緻な競合調査やマーケティング・リクルーティングも可能になります。
ハイパーオートメーションのメリット
ハイパーオートメーションには、以下のメリットがあります。
・大幅な業務効率化
・業務の精緻化
・ビジネスモデルの革新
・コンプライアンス強化
まず自動化により業務は大幅に効率化するでしょう。作業要員としての人手も大幅に減らせます。
またロボットが業務を行うとなると、ヒューマンエラーがなくなり業務の精度がより一層向上します。製造業や物流業などでは、特に注目すべきメリットでしょう。
さらにハイパーオートメーションを活用するとなると、ビジネスモデルも大幅に変化します。
人(スタッフ)のあり方が見直されるほか、戦略策定などにおいてもAIやロボットが大いに活躍するでしょう。
また業務フローがデータで管理されることにより、コンプライアンス強化の側面もあります。
このように、結果的に企業ブランドの向上へつながるなど、ハイパーオートメーションには複数のメリットがあるのです。
ハイパーオートメーションの事例
ではここから、ハイパーオートメーションの事例を見ていきましょう。
今回はハイパーオートメーションを実現できるワークフロー自動化ソリューション「Tungsten TotalAgility(以下TTA)」の導入事例を、業界別に紹介します。
・物流業界
・金融業界
・保険業界
・医療・ヘルスケア業界
TTAを簡単に説明すると、高度な人工知能を用いたワークフロー自動化ソリューションです。
AIのほか、ドキュメント処理から意思決定管理、プロセス オーケストレーションとマルチな機能を兼ね備えています。
また多様なシステムをシームレスに同期できるため、メールにチャット、PDF資料などさまざまなソースから情報を収集できるのも特長です。
さらにそれらを情報源として、より効率の高いプロセスの自動化を提案・実現できます。TTAについては下記で詳細に解説しておりますので、併せてご覧ください。
では、そんなTTAを用いた事例を見ていきましょう。
物流業界での活用事例
まずは物流業界におけるハイパーオートメーションの事例です。
こちらの企業では出荷情報から必要な情報を抽出し、データベースに登録する作業をTTAによりハイパーオートメーション化しました。
単純に思える作業ですが、出荷情報の媒体や書式は業界内で標準化されていません。そのため紙やメール、PDFなどさまざまな様式で送られてくるほか、内容もバラバラ。
さらにデータ登録の際、人の目でチェックして必要に応じた不足内容の補足を行う必要もあります。そのため、なかなかワークフロー全体を自動化するのは難しい状況でした。

そこで、TTAを導入。下記のとおりさまざまなテクノロジーを駆使して、文書の読み取りからデータベースへの登録までの一連を自動化に成功しました。

以前のプロセスに比べて約90%の時間をカット
同企業では、以前のプロセスに比べて約90%の時間カットに成功しました。また出荷情報のデジタル化に伴い、出荷追跡が容易になったというベネフィットもあります。
出荷書類をリアルタイムで追跡および監視できるようになったため、ユーザビリティも向上。データの保管場所が統合されたことにより、セキュリティも強化できました。
時間だけでなく、ユーザビリティやセキュリティ面でも大きなインパクトをもたらした事例です。
金融業界での活用事例
こちらの企業では、顧客デューデリジェンス(CDD)にTTAを用い、ハイパーオートメーションを実現しました。
顧客デューデリジェンスとは、テロ資金調達や詐欺のリスクを低減するために、顧客情報を収集するプロセスです。
顧客の申し込みを受け入れるまでには、下記のとおりさまざまなプロセスがあります。

申込書類を確認するだけでなく、信用情報機関や地理位置情報データベースなどの外部レポートを用いて顧客情報を検証・評価します。
そのうえで財務評価を行い、リスクのレベルごとに顧客をプロファイルするのも手作業で行っていました。
そこでTTAを導入。その後は以下のとおり、一連のフローの自動化に成功しました。

マルチチャネルキャプチャによる身分証明書の読み取りから、RPAによるバックグラウンド検証、リスクプロファイルまでを全自動化しました。
週に約1,000時間の余剰時間を創出
この企業ではハイパーオートメーションの実現により、データ収集が 88%高速化しました。これまで13分かかっていた作業が、90秒未満で完了できるとのことです。
これにより、週あたり1,000時間の余剰時間創出に成功。このほかにも、以下のようなメリットが得られました。
・迅速なオンボーディングの実現
・カスタマーエクスペリエンスの向上
・顧客プロファイルのリアルタイム更新の実現
・顧客増加にも難なく対応可能
・コンプライアンスとガバナンスの強化
・自動化されたリスク評価アルゴリズムの活用によるリスク軽減 など
保険業界での活用事例
続いては保険業界でのハイパーオートメーション活用事例です。こちらの企業では、生命保険および年金保険の請求処理にTTAを導入しました。
顧客が請求書を提出してから申請が受理されるまでには、下記のとおり長く複雑なフローが存在します。

提出書類の確認や補足情報の提出催促、書類に不正がないかの確認から内部での稟議承認など。人の手で上記プロセスを行うと、見逃してしまう不正請求も存在し得ます。
さらに請求処理が長期化することで、顧客満足度も低下。多くの人的資源を必要とする点も課題として挙げられます。
そこでTTAを導入。下記のとおり、一連のフローの自動化に成功しました。

1万2,000件以上の保険不正請求を発見
請求処理のハイパーオートメーション化により、1万2,000件以上の保険不正請求を発見することにつながりました。その金額はなんと1億1,300万ポンド以上。
不正検出プロセス内にTTAを統合することで、より高い検出率の実現につながったのです。
このほかにも、以下のようなメリットが得られました。
・請求処理の迅速化
・顧客からの苦情が75%減少し、満足度スコアが40%向上
・請求件数の増加にも難なく対応可能
・請求処理時の規制違反が70%以上減少
・手動検証と比較して不正検出率が50%以上向上
・コスト削減
医療・ヘルスケア業界での活用事例
最後は医療・ヘルスケア業界でのハイパーオートメーション事例です。
こちらの医院では、患者の新規登録から定期的な検診などの継続的なフォローに、多くの工数がかかっていました。
新患の登録時には以前の医療機関の記録やKYC(Know Your Customer)文書、保険情報など複数の情報を統合し、データベースに登録します。
KYCは、金融機関や企業が顧客の本人確認を行い、不正行為やマネーロンダリングを防ぐための規制プロセスを指します。顧客の身元確認やリスク評価を通じて、法的コンプライアンスを維持し、安全な取引を確保することが目的です。

さらに来院予約時にも身分証明書の確認やカルテの作成など、さまざまなタスクがありました。そこでTTAを導入し、フローの大半を自動化。
下記のとおり、新患の予約や登録を大幅に効率化しました。

それだけではありません。院内データベースとEHR(Electronic Health Record「電子健康記録」)との統合により、タイムリーな患者記録の更新が実現しました。
患者の紹介とケアの調整を合理化
この事例では患者の受け入れからケアに至るまで、さまざまなメリットが得られました。
・新患登録の待ち時間を83%短縮
・オンラインポータルで24時間年中無休の新患登録を実現
・登録時の手動エラーを低減
・収益化までの時間短縮でキャッシュフローを最大11%向上
・タイムリーな情報共有の実現により患者紹介やケアの調整がスムーズに
TTAなら効率化をさらにスケールアップ可能
TTAはあらゆるテクノロジーとシステムを駆使し、企業のボトルネックを解消します。また事例のとおり、業務効率化以外にも一度で多様なメリットが得られるのも特長です。
これまでのタスクレベルでの自動化からスケールアップし、業務フロー全体を自動化できます。これにより、事務的な作業負担が大幅に軽減。
新たなビジネスモデルの創出も検討できるでしょう。なおTTAは、プログラミングの専門知識がなくても使えるローコード開発を採用しています。
ITの専門的な人材がいない企業にもおすすめです。
BPRの一環としてまずはRPAの導入も

ハイパーオートメーションの実現には、デジタル環境やスタッフのITリテラシーが前提となります。
そのためまだ導入は現実的ではない、という企業も多いでしょう。このような場合、BPR(Business Process Re-engineering)が必要です。
BPRは、業務フローや制度など組織の体制を抜本的に改革することを指します。この際、役立つのがRPAツールです。
RPAは自社で開発したロボットにより、業務を自動化できるツールです。開発を内製化できる点や、自社に合ったロボットを開発できる点から、BPRの一環として活用できます。
なかでもRPAツール「BizRobo!」は、ITの専門的な知識がなくてもロボット開発が可能。簡単なマウスのクリックとドラッグ操作で、任意の業務を自動化できます。
これにより定型業務を自動化し、年間1,000時間単位の創出に成功している企業も少なくありません。
まとめ
日本におけるハイパーオートメーションの事例は、今後より一層増えていくでしょう。すでに大手企業をはじめ、ハイパーオートメーションの実装は着実に広がっています。
社内で蓄積されたデータや資料を十分に活用し新しい経営戦略を検討するうえでも、ハイパーオートメーションは非常に有効です。
ぜひ本記事の事例を参考に、自社のオートメーション化も推進してみてください。
【参考】
※1 「ガートナー、2020年の戦略的テクノロジ・トレンドのトップ10を発表」を加工し作成