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教育DXとは、教育のデジタル化を通して従来とは異なる教育スタイルを確立し、未来のIT社会に備える取り組みです。
教育DXは文部科学省により推進されており、実際にVRやiPadを教育現場に取り入れる学校も増えています。
そこで本記事では教育DXに関する教育法案や推進策、実際にどれほど普及が進んでいるのか、具体例も交えて解説します。また、児童・生徒や保護者、教員にとってのメリットや課題も解説します。ぜひ参考にしてください。
教育DXとは
教育DXとは上記画像のように、「デジタル化への代替」「教育体制の増強」「教育スタイルの再定義」という3段階で構成されます。
教育DXは単に教材を電子にする、といった代替的な取り組みにとどまりません。デジタル化のメリットを活かして教育の方法やあり方を再定義し、変えていくのが教育DXのポイントです。なお政府は、以下の3本柱で教育DXを推進しています。
・教育データの意味や定義を揃える「標準化」(ルール)
・基盤的ツール(MEXCBT、EduSurvey)の整備(ツール)
・教育データの分析・利活用の推進や、教育データ利活用にあたり自治体等が留意すべき点の整理(利活用)
(※1)
「Society5.0時代」に向けた文科省の取り組み
政府は来たる「Society5.0時代」に向けて、教育DXを推進しています。Society5.0時代とは、今後訪れるであろう時代を指す言葉です。
(※2)
現代は「Society4.0時代(情報社会)」であり、「Society5.0時代」は以下のように定義されています。
サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会(※2)
このSociety5.0時代に向けて、文部科学省は以下のような取り組みを掲げています。
・子供の特性を重視した学びの「時間」と「空間」の多様化
・探究・STEAM教育*を社会全体で支えるエコシステムの確立
・文理分断からの脱却・理数系の学びに関するジェンダーギャップの解消(※2)
*STEAM教育とは、 Science、 Technology、 Engineering、Mathematicsを統合的に学習する「STEM教育」にArtsを加えた教育のこと
教育DXの一環「GIGAスクール構想」
初中等教育においては、「GIGAスクール構想」という取り組みが掲げられています。GIGAスクール構想とは、「子供たち一人ひとりに個別最適化され、創造性を育む教育ICT環境の実現」を目指す取り組みのことです(※3)。
具体的には、子供一人に対して1台端末を支給し、より多様な教育の在り方を実現することを目的としています。このように、国を挙げた教育のICT化が進んでいます。
教育DXの現状
日本における教育DXは、まだまだスタートしたばかりで推進と改善の余地があります。では具体的に、現時点でどれ程教育DXが進んでいるのか見ていきましょう。
令和5年10月に、文科省から「令和4年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)」という資料が発表されました(※4)。この調査は、全国の公立小・中・高等学校とその教員を対象としたものです。
ここからはこの統計結果に沿って、教育DXの現状を紹介していきます。
学校におけるICT環境の整備状況
公立の学校におけるICT環境の整備状況は、以下の図のとおりです。
(※4)
1生徒につき、1台以上のコンピュータが割り当てられていることが分かります。ただしこれは、コンピュータ室に設置された媒体も含む結果です。つまり、全生徒が1人1台の端末を持って、端末を活用して授業を受けているわけではありません。
初等教育の現場でもコンピュータの設置が進んでいる点は評価すべき点です。しかしデジタル化により教育体制そのものを変革する段階は、まだ先といえるでしょう。
教員のICT活用指導力の状況
教員のICT活用指導力は以下のグラフのとおり、わずかではありますが前年より伸びています。
(※4)
青いグラフの項目Aは、教員自身が授業の準備でICTを使いこなす能力を示したものです。また赤いグラフの項目Dは、生徒へ基礎的なICTツールの知識や態度を指導する能力を示しています。
これらは平均スコアが85%以上と高く、教員自身のICTスキルやリテラシーは高まっていることがわかります。
一方、オレンジのグラフの項目Bは、授業にICTツールを活用する能力を示したものです。紫のグラフの項目Cは、生徒へICTツールの使い方を指導する能力を示しています。
これらのスコアは平均80%未満。ICTツールといっても、PowerPointでのスライド作成やプロジェクターを使った発表も含まれています。つまり、完全アナログで学習している生徒が依然として一定数いることが分かります。
教育DXのメリット
教育DXのメリットは、単にデジタル社会へ適応するだけではありません。以下のとおり、さまざまなメリットが挙げられます。
・デジタル社会への適応
・多様な教育の実現
・教育の最適化
・教員の負担軽減
また子供だけでなく、教員や保護者にとっても大きなメリットがあります。では、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
デジタル社会への適応
子供達が将来的に社会で活躍できるよう、教育DXの推進は欠かせません。日本をはじめ世界全体におけるデジタル化は、今後も急速に進むことが予想されます。
デジタルツールを使いこなせるスキルは、今後当たり前になっていくでしょう。さらに今後は一層IT人材の需要が高まる見通しです。
多様な教育の実現
多様な教育の実現も、教育DXのメリットとして挙げられます。教育DXが進むと、時間や場所にとらわれない教育が実現します。
たとえば授業がオンライン上で完結すれば、そもそも学校へ「行く」「行かない」といった問題も解消されます。
さらに誰もが授業を好きな時間に受講・復習できるとしたら、病気や怪我など何らかの理由で授業を受けられなくても欠席がハンデになることはありません。後からでも授業を受け、遅れを取り戻すことも可能です。
何かトラブルや事情があっても、子供の可能性を狭めることなく教育を受けさせられるため、親にとってもメリットが大きいといえるでしょう。
教育の最適化
教育DXにより、個人に対する教育の最適化も進みます。たとえばオンライン上で授業や課題などのデータが蓄積されれば、個人の学習傾向や成績の推移などの分析に役立ちます。
さらにそのデータをAIが解析し、一人ひとりへ最適な学習アドバイスを行うこともできるでしょう。
このようにパーソナライズされた学習を提供することで、より一層子供のポテンシャルを引き出せます。また子供の学習状況を一目で確認できるようになれば、親や教員にとっても安心です。
教員の負担軽減
教育DXは教員の負担軽減にも大きく貢献します。たとえば、教材がすべてデータ化できれば、教員は以下の業務から解放されます。
・手作業の丸つけや添削
・プリントの印刷
・教材の運搬や配布 など
授業内でプリントを配ったり回収したりする時間を削減するだけでも、かなりの効率化が進むでしょう。アナログな業務から解放されれば、子供のケアや学習支援など本来の業務に専念できます。
教育DXのデメリット・課題
日本の教育DXは、まだまだ発展途上といえます。その背景には、以下のようなデメリットや課題があります。
・予算不足
・セキュリティ面の不安
・ネットリテラシーの問題
・人材不足
今後はこうした課題を乗り越え、新たな教育体制を整えていく必要があります。
DX化に取り組む予算不足
教育DXに取り組むには、ICTツールの導入が欠かせません。また、場合によってはITに特化した職員を採用する必要もあります。
教育DXの推進には、高等学校DX加速化推進事業(1,000万円上限/1校)といった補助金制度もあります。しかし従来のアナログな体制を抜本的に変えるには、大規模な予算が必要です。そのため、なかなか取り組みに踏み出せない学校も少なくありません。
セキュリティ面の不安
教育DXが進むと、学校のカリキュラムや個人の成績データなどがオンライン上で管理されます。このとき求められるのが、セキュリティ面の整備や強化です。
紙の成績表や連絡網とは違い、オンライン上のデータはどれだけ離れたところからでもアクセスし得るのが難点。また、子供が自分または他人の個人情報を漏えいさせてしまうリスクもあります。
このように、児童・生徒や保護者、教員などの個人情報を守る体制作りや、セキュリティに関するリテラシーの教育は非常に重要な課題です。
ネットリテラシーの問題
教育DXが進むと、オンラインや仮想空間上のコミュニケーションが普及していきます。これに伴い、子供や教育関係者のネットリテラシーの問題も課題として挙げられます。
たとえばネット上のいじめが分かりやすい例です。教育DXが進めば、今以上に簡単かつ柔軟に情報共有できるネットワークが実現するでしょう。そこでの適切なコミュニケーション方法は子供や親、教員などに周知しておく必要があります。
環境が変わればルールも変わるように、新しい教育体制との向き合い方をどうルール化していくのかも大きな課題です。
教育DXに取り組む人材不足
教育DXに取り組む人材がいないことも、大きな課題です。教育現場はアナログな側面が大きく、どうデジタル化を進めればよいのか分からない学校も少なくありません。
また教員もアナログなやり方に慣れており、ICTへの知識やスキルが不十分な場合もしばしばあります。
(※5)
既存の業務が忙しく、体制の変革にまで手が回らないといった背景もあります。
教育DXに取り組む学校の事例
教育DXの推進には、学校により差があります。ここからは教育DXに積極的に取り組む以下の3校の事例を見ていきましょう。
・郁文館夢学園
・立命館大学
・足立区立西新井小学校
「教育DXのイメージが沸かない」「教育DXの事例を参考にしたい」このような人は、ぜひご覧ください。
教育のAI化を掲げる「郁文館夢学園」
学校法人郁文館夢学園では、教える効率と働き方の効率を最大化する「デジタルキャンパス化構想」を掲げています。
2029年度末までに、段階的に取り組まれる本構想では、生徒一人ひとりの学習履歴や面談データを集約した「生徒カルテ」を作成。そして一人ひとりに合わせたオーダーメイドの教育サポートを実施するというものです。
本構想は段階的に進められており、2024年度末までには第二段階に当たる「業務のデジタル化」が完了します。教師・生徒・保護者用のポータルシステムを導入し、あらゆるデータを集約。
これにより印刷物はなくなり、模試や三者面談などの申し込みや生徒の出欠連絡もスムーズになりました。
最終的には生徒の持ち物は端末1台に集約し、AIを取り入れたオーダーメイド教育の実現を目指します。具体的にはチャットボット補助教員教師や、教育機会自動マッチングシステムなどを導入。一人ひとりの夢を実現するために教育を最適化します(※6)。
VRを教育に活かす「立命館大学」
立命館大学の生命科学部と薬学部には、「プロジェクト発信型英語プログラム(PEP)」があります。これは学生がグループごとに立ち上げたプロジェクトを、ポスターセッション形式で英語でプレゼンするというものです。
2022年にはこのPEPを、大学初の「メタバース上」で実施しました。
NTTコノキューが提供するXRプラットフォームを採用し、仮想空間内で学生達はアバターの姿で、発表ルームを自由にデザイン。3D空間を学生生徒達が自由に行き交い、好きなグループの発表を聞いたりポスターを閲覧したりしました(※7)。
これまでは新型コロナウイルス感染症の影響で、1つの授業を2回に分けて実施していた立命館大学。しかし上記のメタバースプレゼンでは、感染症の心配もなく、現実と同様のにぎわいも感じられ、2回同じ授業を行う教員の負担も軽減され、今後の教育DXの可能性を示唆する事例となりました。
Googleのツールを活用する「足立区立西新井小学校」
足立区立西新井小学校では、2021年から教員と児童1人につき1台のChromebookが配布されています。Chromebookは作業内容が常時自動保存されるため、子供達がファイルの保存や整理を意識せずにすむといったメリットがあるそうです。
また授業においては、Googleのアプリケーションを積極的に活用しています。たとえばグループでの共同作業にはリアルタイムでやり取りができるGoogle WorkspaceやGoogleドキュメントを採用。
道徳の授業ではGoogle Jambordを用い、子供達の意見を1つのフォーマットに記載して一覧で可視化しています。6年生からは教師がフォーマットを用意せず、児童自ら資料をまとめあげていきます(※8)。
このようなアプリを使うことで欠席した子供の意見も意思決定に取り入れられるほか、教員が児童の考えをよりクリアに理解できるのも大きなメリットです。
また子供達主導の学習スタイルを確立することで、より理解度が深まるといった期待もあります。初等教育における教員DXの重要性を感じられる事例です。
まとめ
教育DXは、日本の未来を担う人材を育成するためにも必要不可欠な取り組みです。日本ではまだスタートしたばかりの取り組みですが、今後は各地の学校でICTツールの導入や教員のIT教育が進むことが想定されます。
そのためにも、まずはデジタル化にリソースを割けるよう教員やスタッフの業務効率化が急務です。煩雑な事務作業などに追われている場合は、ぜひ「BizRobo!」をご活用ください。
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【参考】
※1 教育DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進について
※2 Society 5.0
※3 GIGAスクール実現推進本部について
※4 令和4年度学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果(概要)
※5 教育業界のDX推進取り組み状況を調査
※6 「教える効率と働き方の効率を最大化!「デジタルキャンパス化構想」」(学校法人郁文館夢学園)を加工して作成
※7 「英語教育をもっと自由に~最新テクノロジー活用で新しい発信の場を~」(docomo business)を加工して作成
※8 「Chromebook と Google Workspace の導入で加速したICT 先進校 ・ 足立区立西新井小学校の多彩な取り組み」(Google for Education)を加工して作成