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近年、多くの民間企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めるべく、さまざまなプロジェクトが進んでいます。一方で地方行政でも、より効率的かつ効果的に職員業務や申請の処理業務を進めるべく自治体BPR(業務改革)などのプロジェクトが進みつつあります。
本記事では、令和2年1月24日「地方行革・スマート自治体等について」の資料を参考に自治体では現在どのような取り組みを実施しており、今後どのような活動を進めていくのかわかりやすく解説していきます。各地方自治体の方々の地方行革・スマート自治体の参考になれば幸いです。
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地方行政とは?
地方行政(地域行政)とは、国家の定めた方針に従い、各自治体がその地域や地方に適した行政改革を進めることをさします。第二次臨時行政調査会で地方行政という言葉が強調され特に以下の3点
(1) 自治体の自主性の強化
(2) 自治体行政の簡素・効率化
(3) 広域行政体制の確立
を各自治体で確立することを意味するとされています。
1985年に自治省は (2) の自治体行政の簡素・効率化に向けた改革を目指し、各自治体が地方行革大綱を定め、それに沿って改革を進めるよう求めて地方行政を実施しました。その改革の内容は職員の事務事業の改善・見直しや組織・機構の簡素化、給与の適正化、民間委託の推進、OA化の促進、公共施設の管理合理化、地方議会の活性化など広範に及びます。(出典:ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典)
国内、特に地方での少子高齢化が深刻さを増す一方で、近年テクノロジーの発展・普及により、地方行政 × テクノロジーで各地方自治体の業務改革による効率化の検討・改革が進んでいます。これにより地方自治体でのひとり当たりの生産性向上が見込め、労働生産性低下問題の解決の糸口になると多くの期待を集めています。
そこで特に重要視されているのが自治体BPR(Business Proccess Re-engineering)です。
自治体BPR(業務改革)とは?
まずはじめに、BPRについて簡単に解説していきましょう。
BPRとは、Business Process Re-engineeringの頭文字を取った略語で日本語に訳すると「業務改革」や「業務再設計」という意味になります。つまりBPRとは、自治体や企業の目標や目的を達成するために、適切な組織構造、業務フローに再構築することを意味します。
では、なぜ民間企業だけではなく、自治体でもBPRが必要となるのでしょうか?また、自治体BPRを実施することにより、自治体行政でどのような変化・改善が見込めるのでしょうか?詳しくみていきましょう。
これからのトレンド自治体BPR(業務改革)とは
国や地方自治体を取り巻くテクノロジー環境は日々急速に変化し、特に人口減少、少子高齢化、社会インフラの老朽化、グローバル化の進展、セキュリティリスクに対する安全確保など、社会構造の変化とともに、解決すべき社会課題は多く存在します。
これらの課題に対して法制度の整備を進めるとともにテクノロジーを活用した運用に以降し、効率的な業務プロセス設計に改善していく必要があります。この業務プロセス設計が改善されないと、
・システムの老朽化
・旧態依然とした紙文化
・セキュリティリスク
・申請対応の遅延問題
など後々多くの問題に直面する可能性が非常に高くなります。このような課題回避するためにも自治体BPRは非常に重要なものと言えるでしょう。
関連記事:自治体BPR(業務改革)とは?自治体の業務改革を進める上で必要な5つのポイントと成功事例を徹底解説!
地方行政と政府の取り組みについて
地方行政の取り組みについて過去に政府や自治体はさまざまな取り組みを実施しています。「地方行革・スマート自治体等について」の資料によると、以下の流れで地方行政が進んでいるようです。
【平成17~21年度】<集中改革プランの実施>
【平成22年度~】 <自主的・主体的な行革の推進>
【平成27年度~】<地方行政サービス改革の推進>
それぞれ具体的にどのような内容の方針で進められているのかみていきましょう。
集中改革プランの実施
集中改革プランとは、平成17年3月29日付けの総務事務次官通知による「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針」(新地方行革指針)に基づき、地方公共団体が行政改革の具体的な取組を集中的に実施するために策定した計画です。 この集中改革プランは平成17年度から平成21年度までの取組みとして明示した計画となります。具体的には、以下の7つの項目が取組み内容としてあげられています。
・事務事業の再編・整理、廃止・統合
・民間委託等の推進
・定員管理の適正化
・給与の適正化
・第三セクターの見直し
・経費節減の財政効果
・地方公営企業の経営改革
自主的・主体的な行革の推進
総務省の公開資料によると、各地方自治体において自主的・主体的な行政改革を推進・行政改革にかかる計画・方針を策定している地方公共団体の状況都道府県47団体(100%)、政令指定都市19団体(95%)、市区町村1,432団体(83%)が策定(平成26年10月1日時点)となっており、各自治体での業務改革が進んでいるようですが、それぞれの自治体の取り組み状況は今後も適宜慎重に確認する必要があります。
地方行政サービス改革の推進
地方行政サービス改革の推進にあたり平成27年に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2015」をもとに以下の3つの事項を実施しています。
○「経済財政運営と改革の基本方針2015」などを踏まえ、 総務省から地方自治体に助言通知に基づく取組を要請 、「地方行政サービス改革の推進に関する留意事項」に民間委託等の推進・指定管理者制度等の活用、BPRの手法やICTを活用した業務の見直し、自治体情報システムのクラウド化の拡大などを実施
○業務改革を推進するため、民間委託やクラウド化等の各地方自治体における取組状況を比較可能な形で公表し、取組状況の見える化を実施
○総務省においては、これらの推進状況について毎年度フォローアップ し、その結果を広く公表
業務改革モデルプロジェクトによる汎用性のある改革モデルの横展開
自治体BPR(業務改革)の大きなメリットとして、 BPR(業務改革)モデルプロジェクトの汎用性にあります。総務省では平成28年度から業務改革モデルプロジェクトを実施し、業務改革成功モデルを横展開するような活動も各地で実施しています。
○ 地方における歳出改革・効率化に向けてBPRを活用した業務改革の実施による官民協力した優良事例の創出や窓口業務のアウトソーシングなど汎用性のある取組みを支援。
○ 業務改革モデルプロジェクトによる汎用性のある改革モデルの横展開のため、
①平成28~30年度に業務改革モデルプロジェクトを実施した全団体の成果概要と報告 書をHP上で公開
②都道府県行革担当・市町村担当、指定都市行革担当へのヒアリングで実施団体の成果を周知 ③ブロック会議等の説明会において実施団体の成果を紹介
○ 上記横展開をさらに加速させるため、以下により希望に応じて平成28~30年度業務 改革モデルプロジェクト実施団体及び総務省の担当者を派遣し、よりきめ細やかな情報提供を実施(令和元年6月28日付け事務連絡発出)。
業務改革モデルプロジェクト取組事例(長野県塩尻市)
各地でさまざまな自治体BPR(業務改革)が進んでおり、長野県塩尻市の事例は業務改革横展開するにあたり多くの自治体で参考にされています。 長野県塩尻市(人口約7万)では、保育業務について、AI・RPAを活用した業務の効率化の取組を検証しており以下のような流れでの業務改革が遂行されました。
業務改革モデルプロジェクトにおけるモデル事業
長野県の業務改革プロジェクト以外にも、自治体BPR(業務改革)モデルプロジェクトとして、さまざまなモデル事業が公開・共有されており、今後さらに自治体での業務改革は急速に進んでいくと考えられます。 一方で業務改革の推進が出遅れている自治体も残っており、テクノロジー格差が問題となる前に早めの対応が必要になってくるでしょう。
スマート自治体について
スマート自治体とは、AI(人工知能)やRPA(仮想知的労働者)などを活用し、自治体の事務処理の自動化や業務を標準化することで、行政サービスなどを効率的におこなう自治体のことをさします。
総務省の「地方自治体における業務プロセス・システムの標準化及びAI・ロボティクスの活用に関する研究会(通称:スマート自治体研究会)」では、スマート自治体の「目指すべき姿」は以下の3点があげられています。
1. 人口減少が深刻化しても、自治体が持続可能な形で行政サービスを提供し続け、住民福祉の水準を維持
2. 職員を事務作業から解放し、職員でなければできない、より価値のある業務に注力
3. ベテラン職員の経験をAIなどに蓄積・代替し、団体の規模や能力、職員の経験年数に関わらず、ミスなく事務処理を行う
スマート自治体の実現に向けた3つの原則
スマート自治体の実現に向け、スマート自治体研究会は、
1「行政手続きを紙から電子へ」
2「行政アプリケーションを自前調達式からサービス利用式へ」
3「自治体やベンダーが守りの分野から攻めの分野へ」
とする3原則を掲げています。では、各原則について具体的に解説していきます。
行政手続きを紙から電子へ
原則1は、いわゆる行政手続きのペーパーレス化について。住民にとって窓口に来ることは負担であるとの考えから、 窓口に来なくても行政手続きを実現できる方法を考えなければなりません。また自治体職員にとっても、紙媒体の書類をシステムに入力する作業は大きな負担です。このため、 AIやRPAなどの技術を効果的に活用し、紙媒体ではなく電子データの形式で取り扱えることが重要課題として明記されています。
行政アプリケーションを自前調達式からサービス利用式へ
原則2では、行政サービスの運用などにクラウドサービスの利用を促進することが掲げられています。サービスを利用することから、システムのアップデートに一早く対応したり各行政分野のシステムが連携できるようになったりして、自治体職員の事務負担を大幅に軽減できることが主な理由です。これらの背景には「クラウド・バイ・デフォルト原則(中央省庁などが、政府の情報システムを整備するに当たり、クラウドサービスの利用を第一候補として検討する方針)」があり、同原則に従って、自治体もクラウドサービスを積極導入すべきとの考えが取り入れられているとみられます。
自治体やベンダーが守りの分野から攻めの分野へ
原則3は、自治体やシステム開発ベンダーが「守りの分野(既存システムの構築や保守管理)」を効率化し、その上で、「攻めの分野(AIやRPAなどの情報通信技術)」にリソースを投入すべきとする思想です。具体的に説明すると、AIやRPAを活用した行政サービスの開発促進に、自治体がよりコストやヒューマンリソースを割くべきであるといった考えと言えるでしょう。
スマート自治体を実現するための7つの方策
スマート自治体の実現に向け、スマート自治体研究会は、
1「業務プロセスの標準化」
2「システムの標準化」
3「AI・RPA等のICT活用普及促進」
4「電子化・ペーパーレス化、データ形式の標準化」
5「データ項目・記載項目、様式・帳票の標準化」
6「セキュリティ等を考慮したシステム・AI等のサービス利用」
7「人材面の方策、都道府県等による支援」
とする7つの方策をあげています。では、各方策について具体的に解説していきます。
1. 業務プロセスの標準化
業務プロセスを改善する際に、はじめに現場の業務を理解し標準化する必要があります。人口規模や組織、地形などの環境が似た自治体間で業務プロセスを比較しながらBPRを行います。優先順位を定めるため、最も効率性に差があるボリュームゾーンを見極めた上で、ベストプラクティスに標準化します。取組事例:総務省「自治体行政スマートプロジェクト事業 その後、システムを標準化し、それに業務プロセスを合わせます。
2. システムの標準化
各行政分野でシステムの標準化を取り組むが、自治体システムの中核をなす住民記録システムを最優先として標準化を進める方針となっています。また、自治体業務の中で重要な位置を占めている税務・福祉分野も優先的に取り組む方策となっています。所管府省は、総務省・内閣官房IT総合戦略室と連携し、 ベンダは、標準仕様書に記載された機能をパッケージに搭載しなければならない。
自治体は、システム更新時期(5年程度)を踏まえつつ速やかに導入し、 遅くとも2020年代に、各行政分野において、複数のベンダが全国的なサービス(例:LGWAN-ASPサービス)としてシステム のアプリケーションを提供し、各自治体が原則としてカスタマイズせずに利用する姿を実現。
3. AI・RPA等のICT活用普及促進
(a) 住民・企業等にとって利便性が向上する部分
(b) 自治体行政の課題を抱える部分
(c) 自治体が取り組みやすい部 分においてAI・RPA等のICT活用を普及促進
このうち、数値予測やニーズ予測などAI技術の活用可能性があるもの(a)は、自治体と企業、各府省が検討し、業務量が多いなど自治体行政が課題を抱える部分(b)は、業務プロセス・システムの標準化(方策①・②)や電子化・ペーパーレス化(方策④)を通じ、AI等を安価に共同利用できる環境を整備しなければならない。 状況によって直ちに導入可能なもの(c)は、自治体は、他団体の導入事例を参考に導入。国は、全国の導入事例を周知、財政支援するものとしている。
4. 電子化・ペーパーレス化、データ形式の標準化
スマート自治体を進める上で、各種書類の電子化・ペーパーレス化、データ形式の標準化は重要な取り組みのひとつとして位置付けされており、政府・自治体において、抜本的な電子化・ペーパーレス化の取組が不可欠とされています。 一方で自治体の資料によると、以下のように各自治体での取り組み事例が出てきているようです。
・デジタル手続法案
・マイナポータルを通じた電子申請
・マイナンバーカードの普及
・ELTAXを活用した電子申告
・引っ越しワンストップサービス
・「書かない窓口」(北見市・船橋市)
・住民異動届のタブレット入力(熊本市)
・官民を通じた分野横断のデータ連携を行うため、データ形式を標準化
5. データ項目・記載項目、様式・帳票の標準化
いままでは各自治体の課題としてデータの標準化ができておらず、データ項目・記載項目などの帳票設計に大きな課題がありました。この項目のバラつきによりBPR導入を進める際やAIやRPAでの業務プロセス改善を進めることが難しくなります。 そこでさまざまな自治体で標準化のニーズ等を勘案し、実態に即した標準化を推進し、以下の手法を取り入れているようです。
・住民・企業等からの申請(自治体から見たインプット)については、省令等により標準様式・帳票を設定
・住民・企業等に対する通知・交付等(アウトプット)については、システムの標準を検討・設定する際に併せて様 式・帳票の標準化の検討を行い、システムの標準仕様書及び省令等において標準様式・帳票を設定
6. セキュリティ等を考慮したシステム・AI等のサービス利用
業務改革を進めていく上で、最優先事項として考慮しなければいけない項目がセキュリティ対策です。膨大な個人情報を扱う各自治体では効率的な情報処理を求められる反面、情報漏洩によるセキュリティ対策も求められます。 そのため自治体は、クラウド上の全国的なサービスとしてシステムやAI・RPA等を利用する場合以下の項目を満たさなければなりません。
▼セキュリティについて
・マイナンバー利用事務系についても、情報セキュリティポリシー(※総務省においてガイドラインを作成)等を遵守することで、 外部と接続(LGWAN-ASPサービスを利用する場合を含む。)
▼ 個人情報保護条例について
・条例上のオンライン結合制限を見直すとともに、
・制限している自治体も、個人情報保護審議会の意見聴取といった手続を経ること等により、オンライン結合を推進
7. 人材面の方策、都道府県等による支援
デジタル活用において、国家としても大きな課題となっているのがデジタル人材の育成です。どれだけテクノロジーが発展しても、テクノロジーを活用するためのリテラシー(知識)がなければ意味がありません。
現在、自治体の首長・議員やCIO・CIO補佐官は、市町村アカデミーや自治大学校、地方公共団体情報システム機構(J-LIS)において、 今後のスマート自治体の目指すべき姿やICTを活用した経営戦略等を学び、以下のような人材確保にも力を入れています。
・人材確保の面からは、既に専門性のある外部人材をCIO・CIO補佐官等に任用するほか、単独で登用することが難しい場 合、複数団体での兼務を前提として登用、又は外部人材をその都度活用
・都道府県や、指定都市・中核市等の比較的人口規模の大きな自治体は、必要に応じて各自治体を支援
・業務担当職員や法令・人事・財政担当職員を含め、自治体職員全員が、庁内研修等によりICTリテラシーを学ぶ
まとめ
いかがでしたでしょうか。今後、民間でも行政・自治体でもデジタルによる業務改革は働き方を改善する上でも、サービスの価値を向上する上でも必要となります。当社でも「BizRobo!」を活用した業務プロセス改善を支援し、多くの活用事例実績もございます。自治体での業務改革やRPA・AI活用をご検討中の職員の方はぜひお気軽にご相談頂ければ幸いです。