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AIの学習を始めるために、まずPython等のプログラミング言語から覚えようとしていませんか?
旅行に行く際に、目的地も決めずにとりあえず車の運転から覚えようとしている状態に陥っている方が多くいらっしゃいます。
いつかは車の運転が上達し、乗りこなせるかもしれません。
でも本当に重要なのは、目的地をまずは決めて、そこに至るための移動手段を策定していくことなのです。
本ブログでは、AIとの正しい向き合い方やAIを活用するために本当に必要なスキルについて、10年以上ビッグデータ・AIに携わってきた、
RPAテクノロジーズ株式会社の遠藤氏と株式会社aiforce solutionsの高橋氏が語ります。
AI導入に失敗するパターン
遠藤氏:
多くのAI関連の商談を経験してきた中で、AI導入に関する問い合わせの多くが「具体的にやりたいこと」の落とし込みが足りていませんでした。
AIをやりたがるが、何が出来るのか、何をしたいのか、まで考えられていない状態での問い合わせが多かったです。
私が経験したAI導入の失敗事例を4つ挙げます:
失敗事例①:音声認識を使って、コールセンターにたまった顧客の声を活用したい!
失敗事例②:画像で○○をやりたい、AIやるなら画像だろう!
失敗事例③:AIでなにかやりたい、とりあえず残予算でPoC(概念検証)…
失敗事例④:AIを使ったら、新規事業が作れて簡単に儲かる!
このように、うまくいかずに失敗する事例の特徴として、「やりたいことのビジョンが不明瞭」というものの他にも、
個別の開発やデータ収集にかかる時間を考えずにすぐにできると思って話を持ってくる、
量はあるが目的にそぐわないデータを持ち込んでくる、といった特徴があります。
そもそもAIの定義とは?
遠藤氏:
AIに正式な定義はありませんが、「人間の知的活動」をコンピューターに再現させる技術、と言われています。
正式な定義がないのは、「知的活動」の定義が人により違うからです。
汎用物体認識(例:スマホを見たら「スマホ」と認識できる)とか誰にとっても同じの「知的活動」があれば、
個別の機能(例:スマホのプロバイダーを知りたい)については個々のニーズに応じて独自に作らないといけないのです。
このようにAIの定義を知ることで、AIに行わせようとしているお題が自分の行動と照らし合わせて実現可能であるかを考えることができます。
例えば、販売数の予測において、「自分が販売数を予想するときに、どんな情報を元に考えているのか、それをコンピューターに渡せるか」を意識することで、
AIを魔法のように勘違いすることを防ぐことができます。
高橋氏:
AIの定義は人さまざまと言われている中で、AIで「できること」として捉えることが大事です。
現在のAIは機械学習(Machine Learning)によって作られています。
機械学習の機能は大きく「教師有り学習(Supervised Learning)」、「教師なし学習(Unsupervised Learning)」と「強化学習(Reinforcement Learning)」の3つに分かれますが、
その中で、現在ビジネスに適用されている約8割のAIが「教師あり学習」です。
「教師あり学習」のAIとは、過去の実績や事実を学習し、あるカテゴリに「分類」するか、未来の数値を「予測」するのかです。
AI導入の正しい進め方
遠藤氏:
正しいAI導入のプロセスは以下の6ステップになります。
本来はこのプロセスで進める必要がありますが、多くの日本の企業はAI導入自体が目的となってしまい、いきなりSTEP4のPoC(概念検証)から入り、データが足りず失敗します。
また、プロセス通りに進めたとしても、STEP1とSTEP2の「課題明確化」「AIでどの様に質問を解いていくのか」についての工程が甘く、
後ろのステップがうまくいかないパターンも多々あります。
結局、AIを導入する為には「適切な問題設定」をする事が大切になってきます。
AIは人間の知的活動を再現するものでしかないので、やりたい事―「人間のどの判断を再現させたいのか」を明確にして、
その上でどんなアプローチをするのかを考える必要があります。
ビジネスでAIに取組むには、Python等のプログラミング言語を学習するよりも、
このような考え方が、失敗しない大事なポイントです。
AIを活用するために本当に必要なスキル
遠藤:
AI学習をせずともツールでまかなうことの出来る部分が増えている現在、仕事でAIに取り組むのであれば、AIを開発できる技術がなくても、「適切な問題設定」をすることが成果につながります。
そしてキャリアアップを目的としてAIに取り組むのであれば、「データサイエンティストを『使う』側の人材」、いわゆる「DX人材」を目指すべきです。
「DX人材」は与えられた課題をAIで取り組む問題へと変換する力を持ち、データサイエンティストに対して適切に仕事を定義して割り振ることができる人材です。
このような人材は現在ビジネスで求められており、価値が高くなっています。
高橋氏:
新しい技術が台頭してからビジネスで活用されるまでに10年かかると言われている中で、AIは今現在は台頭し始めたところかもしれませんが、10年後には当たり前に用いられる技術になっていることが予想されます。
AIが当たり前となった世界で重要なのはAIを「作る」技術よりもAIを「使う」ビジネスモデルの確立と実行になるのではないでしょうか。
10年後に出遅れないために、今からAIを「使う」意識を持つことが大切です。
AIを「使う」側になるはじめの一歩としては、「どこにAIが使われているのか」を自分の中で分解できる能力が重要になってきます。
AIの分解のフレームワークは様々ありますが、
「どのようなデータを利用しているのか」、
「そのデータはどんな種類なのか」、
「AIのどのような機能を利用したのか」、
「アウトプットは何か」
を考えて、それがビジネスとして成り立つのかを考える、という訓練を繰り返すことでAIの分解が出来るようになっていきます。
おわりに
AIを「作る」よりも「使う」意識がこれから重要になってきます。
AIを扱うにあたって、大切なのはAIを使って「何がしたいのか」、になります。
「したい事」を成功させる実行力を持つためには、AIを開発するスキルよりも、
AIに関する大まかな知識と構想力、そして必要最低限のツールを扱うスキルを身につけることが大切です。
また、AIを使う人材になるはじめの一歩として、常に「どこにAIが使われているのか」意識し、自分の中でデータと機能に分解してAIを考えることが大事です。