BizRobo! ブログRPA関連のお役立ち情報をお届けします
昨今、多くの医療機関でRPA活用の有効性が実証されています。一方で「どのように院内でRPAを啓蒙していくのか」「本当に自分たちでロボット開発できるのか」など、RPA推進体制やアプローチに関するお問い合わせをいただくようになりました。
今回は先日実施した「病院によるRPAの自走は可能か?医療機関における実践事例セミナー」のレポートを通じて、RPA活用で成果をあげられている病院の取り組み事例をご紹介させていただきますので、ぜひご一読ください。
目次
市立函館病院 若木 啓亮氏より
RPAの導入背景
市立函館病院は1860年に箱館医学所として設立、160年余りの歴史を有する病院です。許可病床数は648床、診療科は29科あり、南北海道の基幹病院として地域で大きな役割を担っています。
RPA導入検討をスタートしたのは2020年で、主な目的は下記の2点です。
- ・タスクシフト・タスクシェア対策
- 2024年度開始の医師の働き方改革に向けてのタスクシフト・タスクシェア対策。医師や医療従事者は専門性の高い業務に専念できるように
- ・将来的な人口減に伴う働き手不足の解消
- 特に函館・道南地域は人口減少率(推計)が大きく、労働人口も減少。業務を効率化し、単純なPC作業はロボットにまかせる
2022年11月にトライアルを開始、その後プレゼンやプロポーザルを経て、2023年9月から本格運用をスタートしました。
対象業務の選定方法
RPAで自動化する対象業務を選ぶプロセスは、下記のように進めていきました。
- ① 会議等での周知
- ・各部署の所属長の出席する会議等でRPAのプレゼン実施
- ・RPA化できそうな業務の候補を出してもらう
- ② 説明会の実施(要望のあった部署のみ)
- ・RPA化できそうな業務のイメージを深めてもらう
- ③ 対象業務の選定
- ・削減時間の多い業務から実施
- ・その中でも複雑(条件が多いなど)な業務はRPAテクノロジーズに依頼
- ・作成方法を覚えるために単純な業務から手を付けてみる
どのようにロボット開発できるようになったか
どのようにロボット開発できるようになったかというと、とにかくBizRobo!を操作してみることに努めました。電子カルテの起動とログインなどの簡単な処理からロボットを作り始め、データ抽出ソフト実行など徐々に難易度を上げていきました。
また、BizRobo!のサポートコンテンツのひとつであるeラーニングやナレッジベースも活用しました。様々なコンテンツがあるため、わからない部分だけ参照してロボット開発に役立てることができました。
現在、稼働中・試験運用中のロボットを一部抜粋してご紹介します。
その他のロボットも含め、運用開始から約4カ月で1,253時間/年の削減に成功しました。
今後の展望
- ① 職員のRPAに対する理解度向上
- ・まずはRPAの認知度向上
- ・各部署で「RPAで可能なこと」の判断がつくように
- ② 稼働ロボットの増加
- ・幅広い部署でロボットを稼働させ、RPAの効果を実感してもらうことにより各部署でRPA対象業務をさらに拡大していく
- ③ RPA担当者の増員・開発者の育成
- ・現在、担当者兼開発者は1名…
不在時にエラーが発生しても誰も対応できない - ・少なくとも、簡単なエラーに対処できる体制づくりから
社会医療法人敬和会 首藤 功氏より
RPA導入経緯
敬和会は、大分岡病院・大分リハビリテーション病院・大分豊寿苑・在宅支援クリニックすばる・けいわ緩和ケアクリニック・けいわ訪問看護ステーション・佐伯保養院・敬和国際医院の8施設が連携して、切れ目のない様々な医療介護サービスを提供しています。
現在、医療・介護現場は多くの課題を抱えています。
- ・人手不足
- 生産年齢人口減少、人材確保が困難、長時間労働
- ・医療技術の進歩
- 指導者の高齢化、人材不足、診療報酬体制の複雑化
- ・高齢者の増加
- 対象者増加、社会保障費負担増
- ・患者の多様化
- 複数の疾患を同時に罹患している患者が増加、医療の複雑化
その他も多くの課題が重なり、医療・介護の現場ではIT技術を活用した変革が不可欠です。
敬和会では、2021年にデジタル推進局のメンバーでRPAを体験し、2022年6月よりロボット開発研修を開始しました。2023年1月より本導入し、これまでに21体のロボットで3,455時間の削減時間を創出しました。
現在稼働中のロボットはデモ動画とともにセミナーでご紹介しておりますので、ぜひご覧ください。
チームの現体制
前述の通り、敬和会は8施設が連携しているため、RPAチームも横断プロジェクトとなっています。4事業所から6名のメンバーがあつまり、自主開発型(エンジニア派遣での開発支援あり)で推進しています。また、6名のメンバーは専従ではなく兼務しながら開発を進めています。
社会医療法人祐愛会 織田病院 寺井 一色氏より
RPAの導入理由
織田病院は佐賀県鹿島市にあり、111床を有する病院です。これまで、生産年齢人口の急激な減少や85歳以上人口の急激な増加に備え、院内のデジタル化を推し進めてきました。その一部が下記となります。
- ・2012年11月
- 電子カルテシステム導入
- ・2015年4月
- 介護支援システム導入
- ・2019年4月
- スマートベッド導入
- ・2020年4月
- オンライン診療開始
そして、2021年秋ごろからRPAの導入検討をスタートし、別のRPAツールをトライアルしたものの途中で断念してしまいました。2022年秋ごろにRPAテクノロジーズ社と出会い、その後トライアルを経て、2023年6月から本格的なロボット開発を開始しました。
RPAの導入理由は、主に3点です。
様々なRPAツールがある中でBizRobo!を選んだのは、医療機関での実績や事例一覧が多く、安心感があったからです。また、現地でのサポート体制もあり、院内システムとの相性も良かったため、導入を決めました。
自走・内製化へ向けての取り組み
ここからは、自走・内製化へ向けて取り組んだことを一部抜粋してご紹介します。
- ・開発者の教育体制構築
- 2023年6~8月は集中開発期間として週4日ほどRPAテクノロジーズ社の支援を受けてロボット開発をしていました。そこから徐々に週2日、週1日と支援の日数を減らし、今では月1で支援を受けながら完全内製化に向けてエラー対応やメンテナンス方法を学んでいます。
- ・RPA開発担当者の配置
- 織田病院ではRPA開発担当者を決めていますが、開発担当者を決めることで開発に重きをおくことができるというメリットを感じています。開発・保守などを外部へ委託することがなくなり、自走・内製化につながり、さらにRPAテクノロジーズ社の支援を通して担当者としてのスキルや経験を積むこともできました。
- ・業務の洗い出し
- 医事課の業務を中心として121業務の洗い出しリストを作成しました。業務目的・スケジュール・優先順などを記載し、必要か不必要化業務の取捨選択を行いました。
RPA導入で得られた成果
2023年6月から本格的にロボット開発を開始し、これまでに73体のロボットを開発、1,410時間の削減効果を創出しました。
それ以外にも、残業時間の削減にもつながっており、例えば医事課ではロボットを導入してから約44時間の削減に成功しました。残業時間削減においては、下記のような声があがっています。
- 「統計業務に使用していた時間を、他の業務にあてることができるようになった」
- 「電話対応や患者様対応などの人にしかできない業務の質を見直す時間ができた」
- 「残業時間の削減によりワークライフバランスが向上した」
今後はロボット開発を属人化させないためにも開発者を増員したり、導入部署を広げたりすることで、より多くの効果を生んでいきたいです。
セミナー完全版では、より詳細な事例や効果などご紹介しています。その他、質疑応答などもご覧いただけますので、ぜひ下記よりお申し込みくださいませ。
また、今後もWebセミナーやすでに実施したセミナーのアーカイブ配信もご用意しております。ご不明点やRPAについてご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
Webセミナー一覧:https://rpa-technologies.com/seminar/
お問い合わせ:https://rpa-technologies.com/inquiry/contact/
- ライター紹介:
- 長澤 史佳(ながさわ ふみか)
- 大学在学中に「ハフポスト日本版」と「ForbesJAPAN」にて記事執筆・編集・翻訳などを経験後、新卒で株式会社PR TIMESに入社し、PRプランナーとして化粧品メーカーや食品メーカーを担当。2022年よりRPAテクノロジーズ株式会社に入社し、コンテンツ企画や広報を手掛ける。