2024年6月、RPAテクノロジーズ株式会社は、会社統合の上、オープン株式会社へ社名を変更予定です。
 
 
 

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RPAの導入は働き方改革に逆効果?その真相と成功事例を解説!

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近年、RPAで働き方改革を進める企業が多く出てきています。2019年4月から働き方改革法案が適用され大企業から中小企業まで規模を問わずさまざまな企業で業務の見直しや業務改善がはかられるようになりました。

その中でもRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)が働き方改革の特効薬やトレンドキャッチアップとして利用され、導入を進めている企業が多くあります。しかし、RPAの本質を理解しないまま導入を進めると活用できずに野良ロボット問題やうまく活用できずに終わってしまうケースがあります。

そこで今回は、
「働き方改革のひとつとしてRPAを進めているけれど、何から進めればよいかわからない。」
「RPAを知って、働き方改革を進めているけれどうまく進んでいない。」
という方にぜひ参考にしていただければ幸いです。

働き方改革とは

働き方改革とは、一億総活躍社会実現に向けた、労働環境を大きく見直す取り組みのことを指します。働き方改革のはじまりは2019年4月1日より働き方改革関連法案の一部が施行され大企業から中小企業まで幅広く経営課題として認知されるようになりました。

厚生労働省によると働き方改革の目指すものとして、「我が国(日本)は、少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少、育児や介護との両立など、働く方のニーズの多様化などの状況に直面しています。こうした中、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題。」としています。簡単に言うと働き方改革は、「個々の働き手の状況に応じ多様な働き方を選ぶことができる楽しい社会を作っていこう。」と言うことです。

それでは働き方改革関連法案の概要と内容についてみていきましょう。

働き方改革関連法案について

現在日本は超少子高齢化の時代に入り、労働生産人口の減少による労働力不足の課題に直名しています。これらの課題解決のため、日本政府は働き手の置かれた個々の事情や状況に応じ、さまざまな働き方を選択できる社会を実現し、1人ひとりがよりよい将来の展望を持てるようにすることを目指し、2019年4月1日から順次、働き方改革関連法を施行しました。

働き方改革は主に3つに区分されています。各項目で施行開始時期が異なり、企業規模により適用対象も変わる部分もありますが、今回は大枠の項目を紹介します。

1.働き方改革の総合的かつ継続的な推進(雇用対策法の改正)

2.長時間労働の是正・多様で柔軟な働き方の実現等
1)長時間労働の上限規制の導入
2)長時間労働抑制策・年次有給休暇取得の一部義務化
3)フレックスタイム制の見直し
4)企画型裁量労働制の対象業務の追加
5)高度プロフェショナル制度の創設
6)勤務間インターバル制度の普及促進
7)産業医・産業保健機能の強化

3.雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
1)不合理な待遇差を解消するための規定
2)派遣労働に関して、均等・均衡待遇方式か労使協定方式かを選択できる権利の確保
3)労働者の待遇に関する説明義務の強化
4)行政による履行確保措置と裁判外紛争解決手続き(行政ADR)の整備

上記内容のなかで働き方改革を進める企業では、2. 1) 長時間労働の上限規制の導入の対応策としてRPAを検討・導入を進める企業が見受けられますが、このような課題をRPAで短期的に解決することは難しいです。なぜならば、「RPAを導入する前にRPA推進するための体制づくり」、「社員へのロボット開発教育」、「ロボットに任せる業務の洗い出し」等々、事前に準備を進める必要があるからです。働き方改革の特効薬や他社が導入しているからというトレンドキャッチアップの理由でRPAの導入を検討している方は一度立ち止まって、何のためにRPAを導入するかを考える必要があるでしょう。

働き方改革の背景と課題

働き方改革の必要性が叫ばれるようになった背景には、昨今問題視されている日本の「少子高齢化による労働人口の減少」、「長時間労働と過労死問題」、「労働生産性の低さ」などの課題が深く関係しています。

少子高齢化による労働人口の減少

2060年頃には、国民の約2.5人に1人が65歳以上の高齢者になり、世界でも類を見ない超高齢化社会を日本は控えています。この労働人口の現状により、日本の総人口は減少の一途を辿り、労働力の中核といわれる15歳以上65歳未満の生産年齢人口も1995年頃をピークに減少傾向に転じています。日本経済に与えるインパクトをできる限り軽減するために、早期に生産年齢人口を補う対処をしなければならないことは明らかです。

出典:2015年までは総務省「国勢調査」(年齢不詳人口を含む)、2020年以降は国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」(出生中位・死亡中位推計)

現在、未就業の状態にある人々の就業支援や、外国人労働者の受け入れだけでは到底追いつかないほどのスピードで進行する人手不足をいかに速やかに補完するかは、近年大きな課題となっています。そこで、注目を集めているのがRPAです。

失敗事例からみるRPAと働き方改革

働き方改革の「2.長時間労働の是正・多様で柔軟な働き方の実現等」、長時間労働の対策をする必要が多くの企業で出てきています。そのため、業務の効率化など社内の課題を解決すべくRPAの導入を検討する企業が多くあります。

しかしRPA導入後、ロボットを思ったようにうまく活用できていなかったり、導入したのは良いものの何から始めればよいかわからない等の新たな問題が発生してしまうことが多くあります。失敗している企業と成功している企業の差はどこにあるのでしょうか?

それは、RPAを始める理由にあります。

RPAは導入すれば長時間労働を短期間で是正してくれたり、残業を瞬時に減らしてくれたりする、何でも解決してくれる魔法のツールではありません。働き方改革のRPA導入において最も多い失敗は、RPAを十分に理解しないまま導入を進め活用しきれず無駄になってしまうケースです。心当たりがある企業も多いはずです。

例えば働き方改革の一環で、残業が多い部門の業務自動化を進めるためにRPAを導入しても、残業の「原因である業務が洗い出されていない」や「そもそもRPAでは自動化できない人の判断に依存するもの」であれば全く意味がありません。RPAの失敗事例ではこのように目的と手段が混在し、手段が目的化することによる失敗事例が後を絶ちません。

RPAは基本的に現場の業務プロセスや課題を洗い出し、小粒かつ膨大な量の単純作業の効率化を手伝ってくれるデジタル人材です。人間がロボットとうまく付き合い、ロボットが最大限に能力を発揮できるお膳立てをする必要があります。

図1-1システム化の対象と“RPA“の適用に必然性のある範囲

上記の図1-1はRPA適用に必然性のある範囲を表したグラフになります。グラフ左側の業務量が膨大かつ業務が停止すると大きな問題になるような業務はRPAでの代替はお勧めできません。粒の大きな業務は予算をしっかり取り、システム/BPR(Business Process Re-engineering)投資により効率化する必要があるでしょう。

一方で業務量が小粒でシステムやBPR投資を今まで断念して全く業務効率化の手が加えられていなかった業務にはRPAが最適になります。IT部門がロボットの統制・管理をし、現場の事業部門の方々がそれぞれの課題に応じてロボットを開発・運用することで、今まで全く手の付けられていなかった業務をロボットに代替することができます。

このようにRPAを導入する前に、事前に自社の課題となっている「ロボットに任せることができる業務対象範囲の洗い出し」、「事前のロボット開発学習」、「ロボットが停止した場合等のイレギュラー対応」、「ロボット管理のルール決め」等しっかりと事前準備する必要があります。これらの準備をし、RPAを導入することではじめてロボットとの協働ができ業務効率化、真の働き方改革ができるのではないでしょうか?

RPAの本質とは

本セクションではRPAとは何か?RPAの本質的について詳しく解説していきます。前述の図1-1で気づいた方もいるかもしれませんが、RPAとITシステムは本質的に違うもので、RPAはITシステムではありません。

図1-2人的資源を”補完”する労働人材技術(デジタルレイバー)

図1-2の左側はRPAの本質であるデジタルレイバーを表した図になります。デジタルレイバーは人間と情報システムの間に介在することにより、人間の定型業務を代行することが可能という点が大きな特徴になります。ここでRPAと情報システムが大きく異なる点は、RPAは人間の労働力を代替する役割を持つことにより、情報システム内で発生する定型業務を人間の代わりに処理してくるという点です。また、ロボットは人間から指示されたことは忠実にこなし、文句を言ったり辞めたりすることなく24時間365日稼働できます。労基(労働基準法)に引っかかり問題になることもありません。

今までは人間と情報システムの2階層の構造だったものが、右記のように3階層の構造に変わることにより、人間はロボットに単純作業を指示するのみとなります。結果として、ロボットと協働することにより人間1人で今までの何十倍、何百倍もの労働生産性を上げることが可能になるのです。

RPAによる4つの業務改革成功事例

それでは各業界具体的にどのような業務でロボットを活用し、労働生産性の向上に努めているのでしょうか?各業界・業種の具体的なRPA業務適応事例をみていきましょう。

  1. RPA導入による医療業界の働き方改革
  2. RPA導入による小売業界の生産性向上
  3. RPA導入による製薬業界の業務効率化
  4. RPA導入によるサービス業界の働き方改革

1. RPA導入による医療業界の働き方改革

短期滞在患者のリストを作成する業務
【課題】
2種類の膨大なデータベースから患者データを確認し、突合する作業があり担当者の負担が大きく多くの件数を人手で確認するため、突合や転記作業にミスが発生していた。

【RPA導入前】
1 担当者は医療事務システムから短期滞在手術など対象患者データを出力
2 医療事務データベースから在院患者データを出力
3 2種類のデータを突合し、短期滞在患者リストを作成

【RPA導入後】
1 ロボットは医療事務システムから短期滞在手術など対象患者データを出力
2 医療事務データベースから在院患者データを出力
3 2種類のデータを突合し、短期滞在患者リストを作成

【効果】
年間100時間以上の余剰時間を創出し、リスト作成におけるミスも少なくなった。さらに、面倒で疲労感の多い業務をロボットに代行し、担当者をルーティンワークから解放することができた。

重症度、医療・看護必要度の算出を行う業務
【課題】
100名以上の患者明細データを目視で確認し、看護対象かどうかを判断する必要があり、担当者の大きな負担となっていた。また、対象のリストをミスがないか見直す必要があり、業務時間を圧迫していた。

【RPA導入前】
1 担当者は電子カルテの管理日誌メニューにアクセス、医療・看護必要度の明細データを出力
2 担当者は非看護対象者のデータを除外
3 看護必要度を算出
4 経営分析係と看護部へ報告

【RPA導入後】
1 ロボットは電子カルテの管理日誌メニューにアクセス、医療・看護必要度の明細データを出力
2 ロボットは非看護対象者のデータを除外
3 看護必要度を算出し、経営分析係と看護部へ報告

【効果】
全てロボットが代行することで、年間114時間の余剰時間を創出することが可能になった。また、月1回だけのイレギュラーな業務を行う必要がなくなり、担当者のスケジュール立てがシンプルになった。

2. RPA導入による小売業界の生産性向上

販売実績を集計する業務
【課題】開発商品の種類が1200 SKUあり、それぞれに対して週次で多くのデータを集計する必要があった。また、集計データをもとに発注数や販売計画を立案するため、データ集計の即時性と正確性の向上が課題だった。

【RPA導入前】
1 集計担当者は販売管理アプリにログイン
2 毎週の販売数量・店舗在庫数量・DC在庫数量、DC出庫数量を専用フォーマット(Excel)に転記
3 企画担当者は集計データをもとに、今後の発注数量数の決定や販売計画の見直しを行う

【RPA導入後】
1 ロボットは販売管理アプリにログイン
2 毎週の販売数量・店舗在庫数量・DC在庫数量、DC出庫数量を専用フォーマット(Excel)に転記
3 企画担当者は集計データをもとに、今後の発注数量数の決定や販売計画の見直しを行う

【効果】
週に32時間程かかっていた作業をロボットがすべて代行できるようになり、データの集計をよりスピーディにできるようになった。また、企画担当者が任意のタイミングで発注数量数の決定や販売計画の見直しを行えるようになった。

販売店向けに在庫表を配信する業務
【課題】全国に約2万社ある取引先に対して在庫表(対象商品、納期、価格などの情報)を定期配信するため、処理量が膨大だった。また、取引先によって対象の商品が異なるのはもちろん、在庫表のフォーマットが異なる場合があり、毎度人手で対応していた。

【RPA導入前】
1 担当者は在庫管理システムを参照し、各取引先向けの在庫情報を抽出
2 在庫情報を各取引先向けのフォーマットに転記し、エクセルファイルを作成
3 エクセルをメールに添付し、取引先へ送付

【RPA導入後】
1 ロボットは在庫管理システムを参照し、各取引先向けの在庫情報を抽出
2 在庫情報を各取引策向けのフォーマットに転記し、エクセルファイルを作成
3 担当者はエクセルファイルを確認
4 ロボットはエクセルをメールに添付し、取引先へ送付

【効果】
年間約120時間の余剰時間を創出した。単純なルーティンワークを減少し、お客様対応などの人が行うべき業務に集中できるようになった。また、同様の業務を行っている他拠点に展開することで、ロボットによる効果を最大化できている。

3. RPA導入による製薬業界の業務効率化

美容品販売サイトで、自社商品の口コミや評価などを収集する業務

【課題】収集する情報の項目や、口コミの数などが多く、非常に作業量の多い業務だった。また、業務量が多いため、週に1回だけ代表的な情報のみを抜き出すことしかできずしっかり分析できていなかった。

【RPA導入前】
1 担当者は美容品販売サイトにアクセス
2 投稿者・年齢・口コミ・購入場所・評価・関連キーワードを確認
3 自社のデータベースに、商品別に情報を転記
※1~3を繰り返し行う
4 収集した情報をもとに、営業戦略の立案や商品設計について検討

【RPA導入後】
1 ロボットは美容品販売サイトにアクセス
2 投稿者・年齢・口コミ・購入場所・評価・関連キーワードを確認
3 自社のデータベースに、商品別に情報を転記
4 収集した情報をもとに、営業戦略の立案や商品設計について検討

【効果】
全てロボットが代行するため、担当者の負担がゼロとなった。さらに日次でデータ収集を行えるため、タイムリーに情報取得ができデータの正確性が向上し、転記ミスなどがなくなった。

各ドラッグストアのシステムからデータをダウンロードし、 自社フォーマットの実績レポートに転記する業務
【課題】各ドラッグストアのデータのフォーマットと、自社の実績レポートのフォーマットが異なっており、担当者が修正する必要があった。また毎日、午前中に数時間かけて担当者が行っている業務のため、業務負荷が高かった。

【RPA導入前】
1 各エリアの担当者は各ドラッグストアのシステムから出荷実績データをダウンロードし、エリア別に集計
2 集計したデータを、自社の実績レポートのフォーマットに合うように加工(エクセルの行と列を入れ替える)
3 実績レポートを本部に送付

【RPA導入後】
1 ロボットは各ドラッグストアのシステムから出荷実績データをダウンロードし、エリア別に集計
2 集計したデータを、自社の実績レポートのフォーマットに合うように加工(エクセルの行と列を入れ替える)
3 実績レポートを本部に送付

【効果】
毎日担当者が午前中かけて行っていた作業が、出社時にはロボットで業務完了できるようになり、担当者が行う不毛な定型業務をロボットに代替、担当者は過度なストレスから解放された。

4. RPA導入によるサービス業界の働き方改革

労働時間をモニタリングする業務
【課題】残業時間削減のためのモニタリングを実施する必要があった。しかし、勤怠システム単体では月末の残業時間着地見込みの算出ができず、チェックが煩雑だった、さらに、人事が個別に要注意な従業員をチェックしているが、全員分の勤怠チェックができていなかった。

【RPA導入前】
1 担当者は各社員の残業時間を確認
2 基準を超過する見込みのある社員をリストアップ
3 対象社員にメールでリマインド

【RPA導入後】
1 ロボットは勤怠システムから対象者データを抽出
2 勤怠システムから勤怠データを取得し、残業チェックシートを更新
3 残業時間着地見込みをリストに更新
4 基準超過者にリマインドメールを送付

【効果】
人事担当者が手動でやっていた際は、百数十人の従業員分しか勤怠チェックができていなかったが、全社員を対象に労働時間のモニタリングが可能となった。これにより、月200時間以上の余剰時間を創出した。

レンタカー予約受付情報を基幹システムに入力する業務
【課題】繁忙期は申し込みが殺到するため、大幅に人員を増強していた。また本来ならば即時対応が望ましいが、処理完了までの期間が「1~2営業日」となっておりお客様を待たせることが課題となっていた。

【RPA導入前】
1 複数のWebページからレンタカーの申込を受付
2 担当者は自社システムにログインし、予約者情報を基幹システムに手入力
3 上司に報告し、上司はミスがないか再確認
4 ミスがあった場合は改めて担当者が入力

【RPA導入後】
1 複数のWebページからレンタカーの申込を受付
2 ロボットは自社システムにログインし、予約者情報を基幹システムに入力
3 担当者に業務終了の報告をメールで送付

【効果】
1期あたりのミスが10件から0件となり、ダブルチェック制度も廃止することができた。さらに1時間当たりの処理件数が10件から80件の8倍と飛躍的に増加し臨時人員を補強することなく繁忙期に対応することが可能となった。

最後に

いかがでしたでしょうか。今回は働き方改革という切り口から、RPAの正しい考え方と使い方についてRPAの事例も含め詳しく解説しました。RPAは2017年のブームから多くの企業に活用されうまく労働生産性の向上に成功した企業がいる一方で、働き方改革の時流にのって導入する企業やトレンドキャッチアップとして導入しうまく活用できずに失敗している企業も多いのは事実です。自社の課題をしっかりと把握しRPAを正しく理解した上で、ロボットとの協働に向けてRPA導入、活用をしていきましょう。