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さまざまな業界で推進されているDX(デジタルトランスフォーメーション)ですが、銀行・金融業界でも積極的な取り組みが進められています。
しかし、紙帳票などアナログ対応の多さや、DX人材不足といった課題があり、DX化が進められていない銀行も多いのではないでしょうか。
そこで、今回の記事では、銀行DXが必要な理由や推進する上で起こり得る課題について詳しく解説します。
また、最新のDX事例も紹介していますので、ぜひ最後までご覧いただけますと幸いです。
目次
銀行DXとは?
銀行DXとは、データテクノロジーを活用した新サービスの提供など、デジタル技術を活用して行う「業務改革」のことです。
手作業で実施している業務の自動化や、デジタル技術を活用した手続きの簡素化などが銀行DXの例として挙げられます。
銀行DXが求められる3つの理由
近年、さまざまな業界やサービスにおいてDX推進が求められていますが、銀行分野においても例外ではありません。
銀行業界でDXが求められる理由を3つ挙げて解説します。
変化していく顧客ニーズへの対応
インターネットやスマートフォンなどのテクノロジーが普及し、銀行業界だけではなく日常の買い物や、ホテル予約などがオンライン上で完結するようになってきました。
そのため、顧客は日常的にデジタル技術の進歩に触れており、銀行に期待するニーズも常に変化してきています。
そういった背景から、今までのように窓口でしか手続きができないといった「限定的なサービス提供」ではなく、場所や時間にとらわれず利用できるサービスが求められています。
そんなニーズに応えていくためには、デジタル技術やデータ活用した取組みであるDX推進が必要不可欠です。
既存システムの老朽化と2025年の崖
今まで、銀行業界の発展とともに業務アプリケーションといったシステムも機能追加などを行い都度バージョンアップしてきました。
その結果、既存業務とシステムの仕組みが根深く絡み合い、容易にシステムの刷新ができないという「2025年の崖」問題が発生しています。
経済産業省の『DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開〜(※1)』によると、老朽化したシステムが存在することによるリスクとして「DXの足かせ」と感じている企業が約7割、システムが属人化してしまい「継承が困難」と回答した企業が6割以上を占めています。
そういった背景から、既存システムの老朽化が「貴重なIT人材資源の浪費」に繋がっており、DX推進の妨げとなっているのです。
外部参入増加による市場競争の激化
他業種と同様に、銀行業界でも外部企業参入による競争が激化しています。特に異業種である楽天やSBIグループといった有名企業が銀行業界に進出しています。
また、競合の中には「デジタル技術の活用」に長けた企業も多くあるため、銀行にとって非常に大きな脅威です。
そのため、市場における競争優位性を確立するには、これまでの業務体制から脱却し顧客が求めるサービスの展開が必須で、早急な銀行DXの推進が求められています。
【銀行DX】最新の導入事例3選
銀行DXを推進した最新の事例を、3つ挙げて解説します。
導入事例① 事務作業の集中戦略化
新潟県を地盤とする地方銀行の第四銀行は、顧客接点の改善と業務効率化に向けた施策として「事務作業の集中化」に取り組むべく、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入しました。
RPAは、定型作業などを自動化できる効果的なツールです。当社は契約申込者の情報を照会する作業や投資性金融商品の基礎データを取得する作業などをRPAで代替し、約1万6,000時間のリソース創出に成功しています。
現在では、現場の業務負担を着実に軽減しながら、空いたリソースで仕事に対する創意工夫を促す効果ももたらしつつあります。
導入事例② 「お客様の声」を自動分析
株式会社三井住友銀行では、これまで手作業で分類・整理していた「お客さまの声」を、既存サービスの改善や新サービス創出へと効果的に活用するため、DXの推進を行いました。
具体的には、内容の要約や見出し作成、分類・整理といった作業を自動で行うシステムを導入しました。
その結果、コンタクトセンターやアンケートへ寄せられた意見や要望、SNSの口コミといった大量のデータを効果的に分析することに成功。
顧客対応の迅速化にサービス品質の向上や、「お客さまの声」の変化を捉えることによる新サービス創出などへ活用できるようになりました。(※2)
導入事例③ チャットボットによる窓口業務対応
株式会社横浜銀行では、これまでもサービス品質向上のため、顧客との接点となるコンタクトセンターの品質強化に取り組んできましたが、多様化しているお客さまのライフスタイルへ対応するため「AI Messenger」の導入を決定しました。
AI Messengerでは「ログインパスワードがわからない」や「返済は何円単位でできますか?」といった問い合わせに対し、スムーズに自己解決できるような仕組みになっています。
また、チャットボットで解決できない問題は、有人オペレーターへエスカレーションする仕組みがあるため、顧客満足度の向上に繋がる短時間での解決を実現できています。(※3)
銀行DXを推進する上での課題
事例でも紹介した通り、さまざまな効果が期待できる銀行DXですが、うまく推進し切れていない企業も多いのが現状です。
ここからは、銀行DXを推進する上での課題を解説します。
最新デジタル技術との互換性の低さ
現在の銀行システムは、1980年代後半から1990年代前半に構築されたシステムがベースとなっています。(※4)
しかし、そこから約35年の時が経ち「開発要員の高齢化」や「システムのブラックボックス化」などにより、最新デジタル技術との互換性の低さが課題です。
他にも、銀行業界は膨大な個人情報や顧客の資産など、重要な機密情報を管理していることからも、すべての対応を慎重に進める必要があり、新システムへの移行ハードルが高いという状況もあります。
DX人材の採用や育成不足
多くの銀行で、DX人材の採用や育成が進んでいないことも課題の一つです。
また、銀行業界に限らず、専門的な知識を必要とするIT人材は社会全体でみても不足しています。人材確保は非常に困難で、求人を出せば集まるという状況ではありません。
他にも、銀行システムはCOBOLと呼ばれる古いプログラミング言語で構築されていることが多く、その言語をメインに扱っていた人材は定年退職を迎える年齢となり、引継ぎ先がより少なくなっています。
そういった観点から、DX推進に踏み出せない企業が多くなっています。
顧客や従業員のITリテラシーにばらつきがある
顧客や従業員のITリテラシーのばらつきも、銀行DXの課題となっています。
最新のデジタル技術は企業にとって大きな価値を生み出しますが、全員がデジタル化に対応できるわけではありません。
DX推進により、新たなサービスの提供や既存サービスの改善を実施しても、かえって利便性が悪くなったと感じる人がいるかもしれません。
そういった状況に対応すべく、顧客向けのマニュアル整備や、従業員には社内研修などの教育体制を整えることが大切です。
銀行業界のDX化を進める施策
銀行業界でDX推進するための施策にを、4つ挙げて解説します。
クラウドで稼働するシステムの導入
銀行DXを推進する上で、クラウドシステムの導入は効果的です。
オンプレミスと呼ばれる設備やソフトウェアなどを自社で保有してシステム構築する運用よりも、導入コストが低いだけではなく、多様な機能をスピーディーに導入できるというメリットもあります。
また、クラウドシステムはブラウザなどを利用し、ログインすることで使用開始できるシステム形態が一般的なため、多拠点で事業を展開している銀行でも使いやすいのが魅力です。
IoTやAIなどのテクノロジーを活用したサービスの導入
IoTやAIなどを活用し、今までできなかった既存業務の改善や、新しいサービスを導入することで競争力を高めることが可能です。
たとえば、印鑑票などの紙帳票を電子化する作業や、膨大な情報から不正を効率的かつ精緻に検知することにAI技術を用いたりなど、さまざまな業務で活用できます。
銀行DXでは、他社事例を取り入れることも大事ですが、差別化できるサービスの提供も大事なので、IoTやAIを積極的に使って企業価値を生み出す方法を検討しましょう。
ルーチン業務の自動化
DXを推進するためには、既存業務に使用しているリソースを削減し、新たにDX活動のリソースを創出する必要があります。
そのための施策として効果的なのが、RPAを活用したルーチン業務の自動化です。
銀行業界では、振替処理や口座開設処理、顧客データの収集作業といった定型業務が多く存在します。そういった業務を自動化し代替することで、業務時間を大幅に削減することが可能です。
自動化した結果、銀行DXを推進するために必要なリソースが創出され、DX活動に注力することができるようになります。
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まとめ
今回の記事では、銀行業界でDX推進が求められる理由や、DX化への課題と施策について解説しました。
銀行DXは事例で紹介したように、上手く推進できている企業もあれば、人材不足やレガシーシステムからの脱却の遅れなどによって、うまくいっていない企業もあります。
顧客ニーズの多様化に合わせて市場競争の優位性を確立するために、銀行DXは必要不可欠です。今回の記事を参考にし、効果的なDX推進につなげていただければ幸いです。
【参考】
※1 DXレポート〜ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開〜を加工して作成
※2 NEC、三井住友銀行に「お客さまの声」を自動分析するシステムを納入~ ビッグデータ分析技術で、顧客満足度向上に貢献 ~
※3 AIチャットボット「AI Messenger」 横浜銀行が問い合わせ窓口として導入
※4 銀行勘定系システムの歴史から見る『DX2025の崖』