導入背景
限られたリソースで市民サービスを維持・向上
職員による試用を経てRPA本格導入を決定
「源氏物語」の舞台で、特産の茶などで名高い京都府宇治市は、人口およそ17万8,000人。約1,400人が従事する市役所は、今後の人口減少に備えて職員数の適正化を進める一方、限られたリソースで市民サービスなどの維持・向上を図る業務再構築を長期目標に掲げている。
市民による提出や、職員による入力の手間をなくす行政手続きのオンライン化を進めているほか、2023年2月に策定した「宇治市デジタル化推進指針」では、マイナンバーカードの普及促進や情報システムの標準化などと並んで「AI・RPAの利用推進」を宣言。実際の取り組みとして、職員が試用版のRPAツールを操作し、庁内の2課で行政事務への適性を検証した。
ここで一定の成果が得られたことから、RPAの本格導入が決定。同年4月、具体的なツールおよび支援事業者の選定を公募型プロポーザルにより実施した。
BizRobo!を選んだ理由
原課による内製への支援体制を評価

検証時に別ツールで開発したロボットも移行
2社が参加したプロポーザルの結果、宇治市はサーバ型RPAツール「BizRobo!」、ならびに同ツール提供元からの導入支援を決定。別のツールで検証中に開発済みだったフォルダ名変更とファイルデータの集約を自動化するロボットは、BizRobo!で再度開発して運用を統合した。
同市では、業務効率化に前向きな部署がRPA導入希望を出し、開発運用を部署単位で内製する方式を原則とする。RPA活用推進を担うデジタル政策課と外部事業者は、その伴走者という位置づけだ。
既存のタスクをRPAで効率化する際には、従来の手順をいったん見直して切り替える事務負担が、通常業務に上乗せで生じる。「そのため外部事業者の選定では、使用するツールの機能や価格と同等以上に、導入部署を技術面でサポートできる手厚い体制を重視しました」と、デジタル政策課長の田口茂仁氏は明かす。
対象業務
6業務で13ロボットが稼働中
AI-OCRとの連携、市長部局外での活用も
同市では市長公室・会計室・上下水道部などの6業務で、合計13のソフトウエアロボットが稼働中。このうち消防本部の消防総務課では、独自の勤務体系で生じる時間外勤務を記録するExcelの日報ファイルから人事・給与システムに入力する日次のタスクをRPAに移行。転記を自動化したことにより、月次で行っていた照合作業も省力化した。
このほか、会計室では当日の支出に関するデータ抽出を、水道営業課では月次決算の資料作成を自動実行に切り替えて経理業務を効率化。こども福祉課ではRPAとAI -OCRを併用し、庁外から紙で回収する情報の迅速な集計を実現している。
RPA導入までの調整や、運用中の対応窓口を担うデジタル政策課の池田美由紀氏は「業務に採り入れる最初の一瞬を乗り越えれば現場も楽になるので『一緒に頑張ってもらえませんか』とお願いする姿勢を大切にしている」と話す。

導入効果
年間2,000時間相当のリソースを創出

時間外労働の削減にも貢献
同市がBizRobo!で創出した職員の人的リソースは、合計で年間2,000時間相当。定型的な事務作業からの解放が進んだことで、対面でのきめ細やかな相談対応や組織のマネジメントに充てられる時間が、着実に増加している。
さらに、日中多忙な管理職が業務時間外に行う例もあった手作業での集計・転記作業が自動実行されるようになり、長時間労働の是正にも貢献している。
DXの先陣を切り、庁内の認知度拡大と並行して進められてきた同市のRPA活用では、身近な実例が増えたことに伴って関心の高まりもみられている。加えて追い風となるのが、2025年10月から各課の係長級を充てた「DX推進員」の制度で、業務課題の洗い出しと解決に向けたデジタル技術の選定が、デジタル政策課と共同で進む。生成AIなど新たな選択肢の採用にとどまらず、RPAの導入でも、さらなる上積みが見込まれている。