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医療業界に関わっている方は医療現場の人手不足についてご存知でしょう。医師や看護職員といわれる看護師、保健師、助産師、准看護師の人材不足は深刻です。
本記事では医療業界の人手不足に焦点をあて、公式に発表されているデータをもとに業界内の人手不足の原因や課題を分析し、医療現場の人手不足対策5つについて解説します。
目次
国別比較の医療関連データからみる日本国内医師不足
国外の医療業界はどのような状況にあるのでしょうか。OCED調査・集計している国別の臨床医師数をみてみましょう。
人口1,000人当たりの臨床医師数をみると、日本は35ヶ国中28位という結果になっており、G7の中では残念ながら最下位で2.4人という状況です。
国外からみても日本は比較的医師数が不足している状況だとわかります。(出典:OECD 「人口1,000人当たりの臨床医師数、2019年または最新データを使用」)
また、厚生労働省の発表した資料によると国別で比較すると看護師も100病床あたりの看護師数において、イギリスが200人、アメリカが141人、イタリアが136人に対して日本は38人という結果になっています。
医療現場の人材不足で浮き彫りになる問題とは
医療の人手不足問題には需要と供給のバランスに問題があると考えられます。日本国内では少子高齢化にともない、医療や福祉を必要とする人口増加が急速に進むだろうと予測されます。
まずは医療現場の人手不足が深刻化している原因について紐解いてみていきましょう。
看護師市場の需要過多問題
日本看護協会の統計資料によると、看護職員の就労数は毎年増加傾向にあります。(参照:日本看護協会)しかし、医療業界市場の全体を俯瞰してみると医師、看護師の人手不足が深刻化している理由が明白になります。
1つ目は就業者数に対しての人材需要が急激に増加しており、人材の供給が追いついていないことです。それにより、一人あたりの業務負荷が重くのしかかり、職員に大きな負担をかけている現状があります。
パーソル総合研究所は「労働市場の未来推計 2030」と題した2030年時点での人手不足の状況を推計しています。
この推計によると、医療・福祉に関わる業界では2030年に約187万人の人材不足が出るのではないかと予測されています。(出典:パーソル総合研究所は「労働市場の未来推計 2030」)
人手不足による離職率の問題
2つ目は離職率の問題です。公益社団法人日本看護協会の発表によると、正規雇用看護職員の離職率は10.7%と横ばいとなり、既卒採用者の離職率は17.7%と依然高い割合が続いている状態です。(出典:公益社団法人日本看護協会 「2019 年 病院看護実態調査」)
どれだけ人材を育成し医療従事者として業務に携わっていても、短期間で離職してしまってはまたすぐに人手不足になるのは目に見えています。
医療に関わる人材の急速な需要と医療業界の離職率が最終的には業界全体の人手不足を招いていることが理解できたでしょう。これらの課題に対して早急に対策していくことが最終的には医療崩壊を未然に防ぐことにもなるでしょう。
厳しい労働環境による離職・退職問題
前述で高い離職率が大きな問題になっていることはデータから見てわかりますが、具体的にどのような理由が離職の問題となっているのでしょうか。
日本医療労働組合連合会の実施した看護職員の労働実態調査によると、「仕事を辞めたい」の回答率が74.9%と約4人に3人が仕事を辞めたいと思いながら仕事をしていることがわかっています。
仕事を辞めたい理由としては「人手不足で仕事がきつい」47.7% が1番多く、次に「賃金が安い」36.6%が2番目に高く、「休暇がとれない」33.7%の理由が3番目となっています。(出典:日本医療労働組合連合会 「2017年 看護職員の労働実態調査」)
この調査結果からわかるように人手不足が業務過多の原因となり、一人あたりの業務量が増加することで仕事に耐えられなくなり、最終的には離職に繋がっていることがわかります。高い離職率の一番の問題は人手不足による業務過多が原因なのです。
人手不足による医療事故の問題
医師や看護師の人手不足による医療ミスや事故の原因になることもわかっています。同調査によると医療事故の原因として「人手不足による忙しさ」81.7%と1番高く、次に「看護の知識や技術の未熟さ」36.4%、「交替制勤務による疲労の蓄積」23.6%となっています。
一見すると、2番目の「看護の知識や技術の未熟さ」は人手不足と関係がないようにみえます。しかし、よくよく考えてみると人手不足により看護の技術や知識が未熟にも関わらず、責任のある仕事を任されているという実情もあるのではないでしょうか。
さらに3番目の「交替制勤務による疲労の蓄積」も人材確保ができていれば、疲労が蓄積した状態で仕事を遂行する必要はないのではないでしょうか。医療業界での人材不足というのはとても深刻だということがわかります。
また、医療ミスや事故の発生は人手不足が原因というのは、厚生労働省が発表した資料にも報告としてあげられており、病床あたり看護師数が多ければ多いほど、患者の安全性は高くなることがわかっています。(出典:厚生労働省 2008年「コメディカル不足に関して〜看護師の人数と教育〜」)
患者4人に対して看護師が1人の場合の患者死亡率を100%とすると、5人に対して1人の場合は107%、6人に対して1人の場合は114%、7人に1人の場合は123%となっています。
この資料からわかるように、看護師の人数が増えることで細かいところまでみることができ、患者の安全性は高まる傾向にあるようです。
医療現場の人手不足対策のための5つの対策
前章で解説した人手不足の課題やデータをみてわかるように、日本の医療業界は深刻な課題を抱えています。これらの課題に対して我々はひとつひとつ解決していく必要があります。どのような対策があるのでしょうか。
今回はさまざま機関から得たデータや資料をもとに、以下5つの対策に絞りひとつずつ解説していきます。
- 給与や残業代など賃金の引き上げ
- 医師や看護師の福利厚生支援
- 医療に関わる専門の研修や学習環境の整備
- デジタル活用による業務プロセス効率化
- 新規職員のキャリア養成支援
給与や残業代など賃金の引き上げ
調査結果によると、離職率が高い原因として「人手不足で仕事がきつい」の次に「賃金が安い」という理由が図3であげられています。給与や残業代、夜勤手当などが低いと離職に繋がることがわかります。
とはいえ病院経営も給与を上げれるほど余裕のない病院も多く存在するでしょう。
最近では新型コロナウィルス感染拡大防止に向け、「医療機関・薬局等における感染拡大防止等の支援」(※1)として厚生労働省からの補助金なども検討されているようです。
医師や看護師の福利厚生支援
給料や手当を充実の対策の他にも、医師や看護師含めた福利厚生制度の見直しも離職率低下対策の良い施策となるでしょう。家庭の都合上どうしても、仕事を辞めないといけない状態になるのは非常に残念です。
近年では離職率低下のための対策として、下記が挙げられます。
- 完全個室の寮を完備
- 医院内の保育所設置
- 診療費用の補助制度
- 休職中の潜在看護師支援制度
- 選択型福利厚生制度(社宅、住宅補助、マイホーム取得支援制度、慶弔金制度など)
- 通勤手当(準夜勤タクシー送迎)
上記に挙げられているのは、ほんの一部の例にすぎません。最近では多くの病院が福利厚生制度を見直し、離職率低下に成功している例はたくさんあります。
医療に関わる専門の研修や学習環境の整備
人手不足の中、業務を遂行する職員の中にはより責任が重くなるにつれ不安を感じている職員の方々もいます。
図4の調査データによると、医療事故の原因1位は「人手不足による忙しさ」、2位は「看護の知識や技術の未熟さ」であることがわかっています。休職中の方々が復帰するには、現場の感覚を取り戻すための訓練や研修が必要となるでしょう。
また、責任範囲が広がるにつれ、再度研修したい方や新しいテクノロジーの扱いに慣れていない方などのためにE-ラーニングなど学習環境を整備し、安心して業務を遂行できるような支援制度があるとよいのではないでしょうか。
デジタル活用による業務プロセス効率化
RPAや電子カルテの活用による定型業務の自動化は多くの病院で実施されています。
例えば、BizRobo!を活用することで、医師や看護師の負担を軽減することに成功しており、企業・病院によっては数千時間、数万時間の時間創出しています。
RPAツールが具体的にどのようなものか知りたい方は、下記無料資料をダウンロードしてご参考ください。
新規職員のキャリア養成支援
どのような業界においてもキャリア設計は重要です。もちろん医療関係者の方々や職員も例外ではありません。
職員のキャリア設計のヒアリング、目標設定、中長期的な資格獲得支援などによるキャリアデザインをすることで、後々キャリア転身の際に医療業界内での配置転換や所属している病院以外の地域や患者・家族に対しても、その能力を有効活用することができます。
それにより、業界内での人手不足問題を最小限に抑えることもできるでしょう。
医療業界のデジタル活用による業務効率化事例をご紹介
それでは最後にデジタルを活用した、人手不足対策の成功事例をご紹介します。今後の人手不足対策の参考にしていただければ幸いです。
名古屋大学医学部附属病院:事務部門にRPAを導入。約9,800時間の効率化を目指す
名古屋大学医学部附属病院だけではなく、医療業界全体で医師や看護師をはじめ多くの職種において、過重労働・人手不足に悩まされています。その中でも、病院内の事務作業の効率化が大きな課題となっていました。
RPAで医療事務の業務効率化・自動化を進めることで、「会議開催案内メール送付業務」「医師勤務時間計算業務」「患者数統計データ作成業務」「過誤納リスト作成業務」「薬剤師一覧作成・更新業務」などの定型業務の自動化に成功。
スタッフの余力時間を確保し、病院の企画関連業務・戦略的な業務、患者サービス、医師や看護師等コメディカルの事務サポートなど、より付加価値の高い業務へタスク・シフティングが可能になりました。
また、院内でRPAを導入することにより合計で約9,800時間の業務効率化が見込まれています。
磐田メイツ睡眠クリニック:定型業務を自動化し新規患者数も大幅にUP
磐田メイツ睡眠クリニックは、患者が集中して新規患者の予約が取りにくい、臨床検査技師の業務過多といった課題を抱えていました。
そこで定型業務による負担を減らすべく、プログラミングの知識がなくても開発できるRPAを導入。日々臨床検査技師の対応が必要だった、予約患者の80~100件の睡眠データ処理を自動化しました。
結果として同グループで年間1,350時間の業務が削減され、新規患者の受け入れ期間が2~3か月待ちから3週間程度まで短縮されるなど、多くの効果につながっています。
東京歯科大学 市川総合病院ー単純作業を軽減し医師の働き方改革へ
東京歯科大学 市川総合病院は、地域医療支援病院をはじめとした数多くの指定を受け、地域社会から求められている総合病院です。2018年からRPAの導入への取り組みを始め、医事課や放射線科など4つの部署を対象に複数のロボットを開発しています。
放射線科では放射線技師による造影剤CT・MRI検査前のeGFRチェックをロボットによって自動化しました。業務単体で毎回1時間程度の作業時間を削減でき、放射線技術師が本来の業務に専念できるようになったといいます。
まとめ
今回は医療業界の人手不足対策についてご紹介しました。新型コロナウィルスの影響もあり、医療現場は逼迫している状況にあります。少しでも医療従事者の労働環境が改善され、業界全体が人手不足解消の方向に進むことを祈っています。
【参考・出典】